韓国犯罪史に残る稀代の猟奇犯罪の実行犯が、12年ぶりに社会に復帰したことで、韓国国民が不安や怒りに満ちている。

 8歳の女の子に対する性的暴行や身体毀損などで懲役12年の刑を受けたチョ・ドゥスン氏(68)が満期出所したのは12月12日。その日、ソウルは氷点下の気温となったが、それを忘れさせるほどの怒りが韓国社会を覆った。

「チョ・ドゥスンを地獄へ」市民が怒り

 12月12日未明、夜が明ける前からチョ・ドゥスン氏が収監されているソウル・九老区南部刑務所の入口付近には、「チョ・ドゥスンを地獄へ」「チョ・ドゥスン死刑」などのプラカードを持った100人余りの市民とユーチューバー、そして記者団までが押し寄せた。数十人の市民は冷たいアスファルトの地面にスクラムを組んで横になっていた。

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 午前6時45分頃、刑務所のドアが開き、チョ氏を乗せた灰色の車がついに姿を現した。

 興奮した市民たちは車の後を追いかけながら、車を足で蹴ったり、卵を投げたりするなど、事故が懸念される状況がしばらく続いた。車はそこをなんとか抜け出し、彼の居住地である京畿道(キョンギド)安山(アンサン)市に向かった。

12月12日、刑務所を出所したチョ・ドゥスン氏 ©️共同通信社

電子足輪が取り付けられた

 チョ氏を乗せた車が京畿道安山市檀園区(タンウォング)にある保護観察所に到着したのは、7時50分ごろ。電子足輪(位置追跡装置)登録などの行政手続きを踏むためだ。保護観察所の前には万一の事態に備えて100人余りの警察官が配置されたが、この日の未明から50人余りのユーチューバーや市民たちもここに押し寄せ、大混雑していた。

 安山市民とみられる老人は「チョ・ドゥスンと一緒に暮らすことはできない」というプラカードを持ち、彼を追放してほしいと興奮した声を上げていた。

 チョ氏は、黒い帽子やマスクで顔を隠し、カーキ色のロングジャンパーにジーンズをはいた姿で、官用車から降りた。チョ氏が姿を現すと、取材陣から「犯行を反省していますか」という質問が飛び出したが、チョ氏は何の返事もせず、建物の中に入った。

「雰囲気がこれほどとは思わなかった」

 1時間後、手続きを終えて建物の外へ出たチョ氏は、記者の要請を受け、しばらくカメラの前で足を止めた。もう一度「心から悔やんでいるんですか?」「被害者家族に謝罪する用意はありますか?」などの質問が飛んだが、チョ氏は何も言わず手を後ろに組んで深く頭を下げた後、車に乗り込んだ。

 現場にいた記者団から抗議が続くと、刑務所からチョ氏と同乗していた安山保護観察所の担当官が代わりにカメラの前に立って、車の中でのチョ氏の行動を説明した。

「チョ・ドゥスン氏が私たちと一緒に移動する時、到底許されない罪を犯してしまったと頭を下げ、これから反省しながら生きていくという意志は表しました」「雰囲気がこれほどとは思わなかったと言いながら、(国民の怒りを)よく分かったと言いました」「被害者にも謝罪の意を伝えると言いましたが、二次加害になる恐れがあるので、絶対に(私たちが監視して)そのようなことがないようにします」