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自宅前からYouTuberたちが生中継

 車がチョ氏の自宅に向って移動しようとすると、興奮した市民たちがチョ氏の帰宅を阻止すると言って車の上に乗って乱暴を働き、警察と衝突するなど、アクシデントが続いた。

 最終目的地のチョ氏の自宅に到着した時刻は午前8時40分ごろ。ここもやはり、明け方から集まった野次馬やユーチューバーで大騒ぎとなっている。

 警察が必死にユーチューバーや市民を止める中、チョ氏は素早く住宅の中に入ったが、興奮した市民やユーチューバーはその後も大声を上げ続け、興奮をなかなか静めることができなかった。周辺住民らの迷惑は気にせず、席を陣取って生中継を続けるユーチューバー少なくなかった。

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 安山市によると、チョ氏の出所日前の3日間、警察に寄せられた住民の苦情は500件余りで、このうち8件が起訴されるなど、チョ氏の出所で安山市全体がパニック状態になってしまった。

あまりに残酷な犯行

 韓国国民がチョ氏の出所にここまで怒りを隠さず興奮している理由は、チョ氏の犯行があまりにも残酷で、罪に比べて彼が受けた刑罰(12年刑)があまりにも軽いと感じるからだ。

 2008年12月11日午前8時20分ごろ、安山市のある教会の路地前でうろついていたチョ・ドゥスン氏は、登校中の幼い女の子を呼び止めた。「君、この教会に通っているのかい?」と、声をかけながら少女に近づいたチョ氏は、いきなり少女の口を塞ぎ、そのまま教会の1階の隅にあるトイレまで引きずり込んだ。トイレに入ったチョ氏は一番奥の部屋に入り、便器の上に少女を座らせた。少女が泣きながら抵抗すると、顔を拳でしきりに殴り、顔をかみちぎった。抵抗が続くと、チョ氏は少女の首を絞めて気絶させた後、性的暴行を加えてから、逃走した。

 やっと意識を取り戻した少女は、渾身の力を振り絞って廊下へ這い出て、「助けて」と叫び、それを聞いた大人たちが建物に入ってきて少女を発見。少女は病院に運ばれた。この事件で少女は肛門や性器の80%を失うほどの大怪我を負った。

意識を失った少女の上に冷たい水

 検察の起訴内容を見ると、チョ氏は用意周到に動いた。犯行後、指紋や精液などの証拠を隠すため、トイレを雑巾などでふき、意識を失った少女の上に冷たい水道水を出しっぱなしにして逃走した。

 チョ氏は裁判の過程でも終始無罪を主張し、検事が関連証拠を提示すると瞬間的に供述を変えるなど、反省の気配が全くなかった。

 だが、チョ氏に言い渡された判決は12年の懲役刑、電子足輪7年、身元公開5年の刑だった。

 電子足輪とは、韓国で2008年に導入された罰則で、殺人、性犯罪などの重大事件を起こし、再犯の可能性が高いと判断された場合、犯人はGPS機能の付いた足輪を装着され、24時間監視される。

韓国法務省が公開した、性犯罪の再犯歴がある人の足首に着用させるGPS位置特定システム ©️時事通信社

 当初、検察は無期懲役を求刑したが、裁判部は彼が泥酔などによる心身微弱の状態で犯行に及んだことを認め、減刑した。判決について韓国国民の間では「量刑が軽すぎる」という非難が激しかったが、当時の法律ではこれが最高の量刑だった。