川崎市役所の商業振興課は「労働者のまちと言われる川崎市は、もともと外食費の支出が高い都市でした。特に下町の川崎区などでは外食で済ませる人が多いと言われていて、年配の常連客が集まる昔ながらの縄のれんの居酒屋が軒を並べています。そうした店の客が自炊などに変えた結果かもしれません」と話す。
ごみごみとした川崎区には、昼カラオケの店が多い。「表通りから1本も2本も入った場所に、小さな店舗があります。店主も客も高齢者で、もうけはあまりありません。毎日来て会話するのが高齢者の楽しみになっていて、健康づくりにも寄与してきました」と同課の担当者は説明する。
カラオケは昼であっても感染拡大させやすい。全国ではクラスターの発生事例もある。しかも、高齢の客が多いとなると、よけいに客足が遠のくだろう。ただ、こうした店が川崎らしい地域コミュニティの維持装置の一つになってきたのは間違いない。「コロナ後」を見据えた場合、これらの店舗がどれだけ持ちこたえられるかが、地域づくりのポイントにもなるはずだ。
「公務員のまち」も外食費は半分に
外食費の減少幅が全国で2番目に大きかったのは山口市の50.1%だ。
こちらもやはり飲酒の下げ幅が大きく、30.9%だった。他には和食(45.9%)、他の主食的外食(47.2%)、喫茶(48.1%)などが低かった。
約19万4000人の人口しかない山口市は、全国第3位のミニ県都だ。ここに市役所だけでなく、県庁が所在し、国の出先機関なども集まっていることから、他都市より公務員の割合が高いとされる。
「公務員のまちなので、感染リスクのある場所には立ち寄るまいと、飲酒を避けた人が多いのかもしれません」と山口商工会議所は話す。
山口市の外食費は、19年10月の時点で1万円を超えていたが、20年4月には4611円にまで落ちた。その後は1度も1万円台を回復しないまま、20年10月時点でも5319円と低迷している。これには原因があるのだという。「少し回復傾向が見られ始めると、ユーチューバーの事件などが発生して冷え込む繰り返しでした」と山口商工会議所の担当者はため息をつく。
「何てことしてくれるんだ」と知事も激怒
「ユーチューバーの事件」とは、コロナに感染して来県したユーチューバーがSNSで人を集め、マスクをせずに県内の観光地や飲食店を回ったために感染者が出た一件だ。村岡嗣政知事が「何てことしてくれるんだ」と記者会見で怒りをぶちまける事態になった。
「県内の新型コロナウイルスの感染者数はそれほど多くありません。感染ルートも行政がしっかり追えています。でも、このように消費が低迷しているところに、さらに第3波で年末年始の消費が落ち込むと、深刻な影響が出かねません」と同会議所の担当者は不安げに語る。
一方、外食費が最も増えたのは青森市の144.5%だった。喫茶(247.5%)、他の主食的外食(231.5%)、すし(213.3%)などとなっていた。このうち額が大きかったのは、他の主食的外食とすしだ。ただし、飲酒は84.0%と減っていた。