新型コロナウイルスの感染拡大で、このところやり玉にあげられているのは飲食店だ。ウイルスの流行で最も打撃を受けた業界でもある。
だが、政府の家計調査で「外食費」とされた支出を分析すると、意外な傾向が分かってきた。第3波の感染拡大が訪れる前、つまり消費が少し上向いた2020年10月時点のデータでは、ウイルスの気配さえなかった前年同月比で、外食費を半減させた都市がある一方で、1.4倍以上に伸ばした都市があったのだ。
なぜ、このような差が出たのか。理由を探っていくと、その都市ならではの気質や経済情勢、コロナ対策が透けて見えてくる。
全国平均は「前年同月比96.5%」
家計調査の対象となっている都市は、都道府県庁の所在地と政令指定都市だ。計約8000の2人以上の世帯から数字の提供を受けている。
それによると、2020年10月の「一般外食」(学校給食を除いた外食。出前や持ち帰りを含む)への支出は、全国平均で前年同月比96.5%となり、「コロナ前」と肩を並べる数字にまで回復していた。
19年10月といえば、消費税の10%化で景気が鈍化した月だ。一世帯当たりの外食も減って、9月の1万3350円が1万1972円に落ちた。これを追い掛けるようにして新型コロナが流行を始め、政府が緊急事態宣言を出した20年4月には4776円にまで転落した。ただし、10月には1万1555円と、ほぼ前年同月の水準に戻った。
そうした中でも、激減したまま復活を果たせない都市がある。
外食費が激減した川崎市
20年10月の外食費が最も減少したのは神奈川県川崎市だ。前年同月比の47.5%にとどまった。一世帯当たり2万677円だったのが、9827円になっていたのだ。同県では相模原市が75.0%、横浜市が82.5%と、マイナス幅の大きい都市ばかりだが、川崎市の激減ぶりは突出している。
新型コロナウイルスの陽性者数と連動しているかというとそうではなさそうだ。川崎市の感染者数は、横浜市の2分の1以下なのである。
具体的にどのような飲食が減ったかを見ていくと、飲酒(30.6%)、和食(33.0%)、そば・うどん(42.7%)、「他の主食的外食」(44.2%)、喫茶(47.4%)などが挙げられる。「他の主食的外食」とは、お好み焼きやピザパイ、ドーナツセットなどである。
これをどう考えるか。