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コロナで外食費はどう変化した? 川崎市は半減、青森市は1.4倍増…各都市の“明暗”を分けたもの

2021/01/05
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なぜ青森市の外食費は伸びたのか?

 青森商工会議所の経営相談課は「市中心部の飲み屋街の店主からは『客がどんどん減って、郊外の飲食店に流れていくので辛い』という相談を受けています。新型コロナの流行後、酒を飲みに行かなくなった分、車で郊外に食事に出かける家族が増えたとよく聞きます」と話す。

 こうした傾向は、データだけでなく、市内の経済動向からもうかがえる。

 青森市の中心街には、豊富な海の幸を握るすし屋が多い。だが、近年は郊外にすしのチェーン店が進出して客を奪い始めた。職人が握るすしを清酒で味わう楽しみ方から、家族で郊外店にすしやピザを食べに行くようなスタイルへの転換が、コロナ禍を機に促進されているのかもしれない。

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青森市 ©iStock.com

 青森市で外食費が伸びた理由は他にもありそうだ。「飲食店を応援しようという気運が高かった」と同商工会議所は見ている。

 例えば、日本商工会議所が呼び掛け、全国50以上の商工会議所が参加した「みらい飯」というプロジェクトがある。クラウドファンディングで地域の飲食店の食事券を販売し、店舗は当面の資金繰りに充てる。購入者には感染が少し収まってから使ってもらおうという取り組みだ。青森市では7月10日までに、3804人から5369万円も集まった。「大阪府堺市に続いて全国第2位の額でした。会議所では他にもテイクアウトの紹介などをしています」と青森商工会議所の担当者は話す。

 風雪に閉ざされる厳しい冬。人口30万人に満たない都市だけに、皆で助け合いながら生きていこうという雰囲気があるのだろうか。

「堅実さゆえの対策」をPRした静岡市

 外食費が2番目に伸びたのは静岡市だ。前年同月比で128.1%だった。

 項目別では、中華そば(184.8%)、すし(161.8%)、和食(151.3%)などが伸びていた。飲酒も前年同月比113.6%だった。

 静岡商工会議所は「静岡特有の保守的で堅実な気風が影響を及ぼした結果だと思います。東海道にありながら、ちっともまちが発展しない原因かもしれませんが、こうした時には底力を発揮するのです。店内のパーテーション設置など感染防止対策は、行政からの補助がなくても、早い段階から当たり前のように各店舗で行ってきました」と担当者が語る。

 そうした効果もあったのだろうか。「東京都、神奈川県、愛知県といった感染拡大が深刻な都県に挟まれ、移動人口も多いのに、これまでは深刻な事態に陥らないで済みました」と話す。

表2. コロナ禍で「外食費」の伸び率が大きかった都市ベスト10(2020年10月分の家計調査データから、前年同月比の値を%で算出)

 だからこそ市民向けのPRができた。「商工会議所の観光飲食部会では、飲食店経営のリーダーが先頭に立ち、『各店舗では対策を取っています。怖がらないで来て下さい。ルールを守って飲食しましょう』と広く訴えました。これを受けて、地元のメディアも動いてくれました。特に夕方のテレビニュースなどでは、飲食店の現場から経営の厳しさと対策について詳しくレポートをしてくれました。そうした報道は他都市より多かったと思います」と語る。

 青森市とは逆に飲酒が増え、中華そば、すし、和食などが平均的に伸びているのは、そのせいだろうか。

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