なぜ今まで議論しなかったのか
――東京都内では1月10日午後8時時点の重症者が128人になりました。
田中 感染者数が最も多い東京都だからこそ、ガイドラインをつくる必要があります。医療の質と量は全国均一ではありません。このためルールもその土地にあった形にすべきです。ただし、症例の多い東京都には議論を先導していく役割があると感じています。
――こうした論議は「波」が押し寄せる前に行う時間があったのではないですか。
田中 その通りです。「命」の問題だけに、医療関係者だけでなく、哲学者なども加わって検討すべきでした。でも、もはやそんなことをやっている余裕はありません。
せめて、日々の感染者が1000人を超えると予想できた1カ月前からでも議論をしておけばよかったのに、何をしていたのかと憤りを感じます。
東京都は重症者の情報を公開せよ
――具体的にはどうすればいいですか。
田中 まず、情報公開が必要です。東京都は死者数こそ毎日発表しているものの、重症者がどうなったかの発表はしていません。膨大な情報は蓄積されたままになっています。
例えばの話ですが、年齢を5歳刻みなどで、生還率や死亡率を示します。人工呼吸器などを装着して外せるまでの日数も重要なデータではないでしょうか。基礎疾患との関係もあります。これらデータや症例を、一般に分かりやすく公開するのです。もちろん個人が特定できないようにするのが条件です。
そうすると、人工呼吸器などを付けても延命にしかならないようなケースが見えてくるかもしれません。逆に救える患者の傾向が分かってくるようなことがあればと期待します。
これらをたたき台にして、都民の皆で考える材料にします。そうしたうえで、学会や有識者に相談しながらガイドライン化していくのです。いずれにしても急がなければなりません。