病院や医者が訴訟を起こされる可能性も
――もし、トリアージを行うような事態になれば、患者の家族に心の傷が残りかねませんね。
田中 だからこそ、情報公開して都民的な議論を行う必要があり、そのうえでのガイドラインとするのです。
あらかじめ説明や合意がなければ、人工呼吸器などを外されて亡くなった患者の遺族から、病院や医者が訴訟を起こされるかもしれません。しかし、入院時にガイドラインに従って「単なる延命にしかならなければ、他の患者のために取り外すこともある」と説明しておけば、医療関係者が殺人者のように言われるのを避けられます。
――こうした情報がこれまで公開されていれば、焦って議論を巻き起こさなくても、都民が認識を深められたのではないですか。
ギリギリの状態にある病院をさらに追い詰めるのか
田中 小池知事は「東京大改革の一丁目一番地は情報公開」としてきましたが、重要なことはあまり情報公開に熱心ではありませんでした。
私はトリアージ以外でも都民に必要な情報と思います。特に高齢者の場合、どこまで「治療」してほしいか、あらかじめ意思を示しておきたい人がいるかもしれません。そうしたことを考える機会になったはずでした。
――医療現場はこのところさらに厳しい状態に直面していますね。
田中 区内で新型コロナ患者を受け入れている病院長からは「コロナ対応のために、12月だけで3億円の赤字が発生した。それでも他の病院と共にウイルスと闘い続けるので、継続的な支援を」「院内クラスターが発生したのに、1人の離職者も出ず、全職員がコロナ病棟や発熱外来に復帰してくれた」などという声が届いています。
ギリギリの状態にある病院に「命の選別」まで押しつけて、さらに追い詰めることだけは避けなければならないと考えています。知事には今こそリーダーシップを発揮してもらいたいと思います。