ちなみによく話に出てくるJBCとはなんぞや? とお思いの方も多いのではないか。
JBCとは国内のプロボクシングを統括する組織であり、ボクサーにライセンスを発行したり(ライセンスがないと国内でプロボクシングの試合はできない)、審判団を出したり、万が一に備えて病院を確保したり、場合によってはライセンスの一時停止などの処分を下すこともある。他のプロ格闘技ではあまり見られないボクシングならではの組織と言えるだろう。
話をタトゥーに戻そう。
JBCによるとタトゥーを入れた選手が近年になって増えているということはなく、昔から一定数が存在していたという。つまりJBCは長年にわたり入れ墨を隠す(お客さんに見せない)という作業に力を注いできた、その道のプロと言うことができるのだ。
では実際の現場で、入れ墨はどのようにして消されているのだろうか。
「入れ墨隠しのプロ」JBCには推奨品もある!
JBCが血眼になって身体検査をして「不合格!」と判断した瞬間に有無を言わさずタトゥーに何かを塗りまくる……というイメージを抱いたとしたらちょっと違う。意外なことに「タトゥーを隠すのは選手と所属ジムに任せている」というではないか。JBCの職員は次のように教えてくれた。
「タトゥーを隠す道具にJBCの“推奨品”というものはあるのですが、基本的には自分たちで用意したもので消してもらうようにしています。忘れてしまう選手もいるのでこちらで貸し出すこともありますし、推奨品を買ってもらうこともあります」
JBCの“推奨品”については後述するとして、これまで多くのタトゥーを入れた選手がこのルールを守ってきた。一方で井岡のような「見えてしまった」ケースがなかったわけではない。
「管理が不十分とお叱りを受けるかもしれませんが、各自に任せているので消し方が甘く、試合の途中からタトゥーがはっきり見えてしまうこともたまにあるのは事実です。その場合は後日、文書で注意をするようにしています」