昨年末、東京で「普通の生活」をするには、「30代で月54万必要」という労働組合の試算を報じた記事が話題になりました。(ハフィントンポスト・2020年12月17日)
東京地方労働組合評議会(東京地評)の東京都最低生計費試算調査結果によると、練馬区で子供2人を育てるためには、30代で月額約54万円(年650万円)、40代で月額約62万円(年740万円)、50代で月額約80万円(年960万円)が税、社会保険料込で必要だということです。「夫(正社員)と妻(非正規社員、夫の扶養内)、公立小学校と私立幼稚園に通う子供2人がいる4人家族」をモデルとしています。
実際の平均給与は調査の数字に及ばず
しかし、実際の国税庁の平均給与を見ると、給与所得者の1人あたりの平均給与は年461万円です。平均年齢は42.8歳で男女別では男性567万円、女性280万円となっています。年齢階層別に分けると、男性の場合も30~34歳で492万円、35~39歳で580万円、40~44歳で634万円、45~49歳で675万円、50~54歳で717万円などで、上の調査の数字には及びません。
厚生労働省の国民生活基礎調査(2019)によると、2018年の世帯所得の平均は全世帯で552万3000円、児童のいる世帯が745万9000円です。児童のいる世帯の平均で、ようやく40代で子育てをするために必要な金額に到達することになります。
さて、この数字は、子供を普通に育てるために必要な最低限の金額なのでしょうか。子どもにかかる教育費から考えてみたいと思います。
年収と教育ローンの関係
現在、国の教育ローンは日本政策金融公庫が扱っています。その対象は、子どもの人数が1人の場合、世帯年収790万円(所得ベースで590万円)程度からです。2人の場合は890万円(同680万円)程度です。一定の所得までの家庭の場合、銀行ローンよりも一般に有利なローンを受けることができるようになっているのです。つまり、子供に高等教育を与える上でこれくらいの年収が必要になると考えることができるでしょう。結論としては、子供を育てるために年650万円の給与が必要という労働組合の試算額は、的を射ているといえます。
また、金融公庫が実施した「教育費負担の実態調査結果(2019年)」によると、世帯年収に占める在学費用の割合は平均で16.3%となり、特に年収200万円以上~400万円未満の世帯では37.5%と負担が上昇しています。住居費も加えると固定費の割合が家計支出の5割以上の負担となる家庭もたくさんあると考えられます。