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社会保険料は増え続け、手取りは減り続けている

 日本では20年前から給料が増えておらず、大卒の初任給も横ばいです。例えば、大卒男性の初任給の平均は、2019年で21万2800円です(厚生労働省)。1997年の男性大卒の初任給は19万3900円なので20年かけても上昇はわずかです。

 一方、国立大学の授業料は年間54万円程度と、諸外国と比べれば低額で、2005年以降金額は上がっていません。ですから、一見すると、給料が横ばいでも問題ないように見えるかもしれません。

 しかし、大きな問題は、社会保険料だけは右肩上がりに増え続けていることです。同じ20年間に、厚生年金保険料は、2004年10 月に13.93から毎年段階的に上昇し、2017年に上限の18.30%になりました。全国組織、中小企業などに勤める人向けの協会けんぽの保険料率の変遷を見ると、1947年度に3.6%だった保険料は2020年度には健康保険料10%に加えて介護保険料が1.79%に上がっています。つまり多くの人にとって、賃金の伸び以上の負担になり、手取りは減り続けているのです。加えて、都内のマンション価格も、外国人の投資などもあって、上昇しています。

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 収入は増えず、デフレであっても住居費の固定費や社会保険料の支払い等で使えるお金は減り続けている。そのために、教育費が据え置きでも教育費の割合は年々上がり続けていると考えられます。

データの家賃と食費などに疑問

 もっとも、冒頭にあげた労組の元のデータについては、FPの立場から見ると疑問もあります。子供を育てる上で生活に必要な物のコストが事細かく計算されているのですが、住居費が低めの設定で、食費が高く、物の使用年数などが企業の減価償却費で計算をされているように感じました。

 例えば、練馬区の30代世帯の住居費は9万8958円(42.5~45平米アパート・マンション)で40代世帯は10万7292円(47.5~50平米)、50代世帯は11万4583円(50~55平米)です。家族4人で、子供の成長に応じて考えると、かなり狭めな住宅での設定となります。

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 反対に食費に関しては非常に多いと感じます。練馬区の4人家族での食費の必要額が、11万2558円から14万5283円で計算されています。総務省の家計調査によると、2019年の2人以上世帯の食費の全国平均は約7万5000円です。

 1日30品目など非常に多くの食品を購入している家庭の場合は、調査の数字くらいかかる場合もあるようですが、食費が10万円超えの場合は見直しの余地があると感じます。そのため、最低限の食事ではないように思います。