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「ローンが終わったら地元で妻と……」

「彼の出身は九州ですが、自宅は東京ではなく、関東近郊。奥さんをその自宅に残して、東京での単身赴任はもう30年くらいになる。3人の子供を育てながら、40代で地元に念願のマイホームを建てた。奥さんは専業主婦で、彼は毎月の給料から生活費を仕送りしながらローンの返済をしていた。たまに飲むビールが好物で、唯一の贅沢だったと思う。

 数年前に義母が倒れた時は、地元に戻って土木建築の仕事をしていたと聞きました。とはいえ、土建の仕事は重労働で高齢の身には辛かったようで、義母が亡くなった後に東京へ戻り、以前勤めていたタクシー会社でまた働くようになりました。『地元でタクシーの運転手をしても稼ぎにならない。東京の方が稼げるし、道にも慣れていて自分に合っているから戻ってきた。ローンがもうすぐ終わるからそれまでは東京で働いて、ローンが終わったら地元で妻とゆっくり暮らすのが夢なんだ』と言っていました」(同前)

男性が勤務していたタクシー会社 Ⓒ文藝春秋

「お正月は働いて、地元へ帰るんだ」

 だが、マイホームのローン完済目前で起きた事故。年末に運転手の男性と言葉を交わしたという別の同僚が語る。

「昨年、奥さんの体調が悪くなり、入退院を繰り返していたそうです。子供たちも独立して離れて暮らしているので、彼はとても心配していて、良さそうな薬や食べ物を見つけては送ったりしていました。長い間、東京と地元を行ったり来たりしてましたが、昨年は奥さんのことやコロナ禍で仕事が減ったこともあって数カ月は地元に戻っていました。東京へ戻ってきたのが11月頃で、『お正月は働いて、1月10日くらいに地元へ帰るんだ』と。ただ奥さんは昨年暮れに退院したけどその後の経過がよくなくて、すぐに再入院しています。ローンや生活費に加えて病院代も稼がないといけないと、無理をしてしまったのかもしれない」