駅前一等地にある巨大な空き地の正体は…
さて、そんな橋本駅の外に出てみよう。
まずは京王線の改札口に近い南口。高架ホームが3階部分で、コンコースや改札口は地上2階。その2階から駅前の通りを渡る歩道橋に直接つながっているようだ。そこからあたりの様子を見てみると……。
まあ、ご想像のとおり、ナゾの終着駅は正体を見てみるとたいしてナゾでもなんでもないもので、取り立てて特徴があるような駅前でもなかった。路線バスの乗り場があって、いくつかチェーン店が入っているような雑居ビルが通り沿いに建ち並んでいる、そんなどこの駅にもあるような駅前だ。
ただ、大きく違うのは、駅前の通りを挟んだ向こう側に巨大な空き地が広がっていること。その空き地では、何やら大規模な工事をしているようだ。
この橋本駅前の工事現場、あの天下のリニア中央新幹線の「橋本駅(神奈川県駅)」の建設現場だという。駅前を歩いていてもおおっぴらにはアピールされていないようだが、すでにJR東海は橋本にリニアの駅を設けることを発表済み。いくら首都圏の外れの橋本とはいえ(ゴメンナサイ)、駅前の一等地によくこれだけの空き地があったものだ……。
かつてそこにあった伝統校
この空き地のナゾ、少し前の地図を見ればすぐに答えがわかる。もともと橋本駅のすぐ南側には神奈川県立相原高等学校があった。1923年に神奈川県立農蚕学校として開校した伝統校だ。
近代以降、このあたりでは養蚕が盛んだったから、それに関連して設けられた学校なのだろう。農業系の学校ということもあって、かつてはかなり広い敷地を有していたらしい。
そんな伝統校だったが、やあやあリニアがやってくる、となって移転することになった。2019年、ほんの少し前のことである。これが私立高校だったら移転交渉もかなり難航しそうだが、あっさりと移転が決まったのは“県立”だったからだろう。
もうすぐリニアがやってくる街の空気
そんなわけで、少し殺風景にも見える橋本駅南口の駅前では、天下の大事業・リニアの工事が進行中。きっと、リニアが開通するころには劇的に生まれ変わることになるのだろう。
工事現場の遠く先には商業施設のアリオなどが見える。もともとは日本金属工業の工場があった場所で、その他にも国鉄橋本工場などいくつもの工場が建ち並ぶ工業地帯だった。今でも三菱電機や大和製罐、山村硝子などの工場が現役稼働中だ。横浜線と相模線というふたつの元国鉄路線があって、貨物輸送にもうってつけの場所だったのだろう。
リニアの橋本駅が開業すれば、それにあわせて再開発も進んでいくのかな……。
そう思いながら振り返ってみると、橋本駅の向こう側(北側)には高層マンションがいくつも建っているのが見えた。すげえ、まるで武蔵小杉みたいだ。やっぱりこれも、橋本にリニアがやってくるという期待ゆえなのだろう。