中野 高校に入ったばかりでした。すごく感銘を受け、こういう集団心理を科学で掘り下げたいと思っているうちに、脳科学の道に進んだんです。ですから私、鴻上チルドレンなんです。
鴻上 いまや飛ぶ鳥を落としている中野信子が何をおっしゃいますやら(笑)。
日本で「同調圧力」が生まれるのはなぜ?
当日は思いがけない中野さんの告白に、鴻上さん大照れで始まった師弟(!?)対談。鴻上さんも中野さんに脳と国民性の関係をたっぷり聞こうと準備して臨んでいた。
そもそも日本人は自分と近しく意見がかみ合う他者には優しく、固い絆で結ばれるが、一方で知らない他者には冷たい。それはなぜなのか。パートナーを束縛したがる人と、束縛しない人がいるのはなぜなのか。そして日本人が世界で最も実直で真面目で自己犠牲さえ厭わないのはなぜなのか。中野さんがそんな疑問に脳科学的な解説を加えていくうちに、なぜ日本で「同調圧力」が生まれ、息苦しい社会になってしまうのか、そのからくりも明らかになっていく。
では、同じ日本人でも大阪人はなぜ、そのからくりから自由でいられるのか。どうしたら私たちもそのからくりから逃れ、自分らしく自由に生きることができるのか。二人の話は、そのために「演劇」が果たす役割にまで及んだ。対談を通して二人は、「演劇」には、私たちに遺伝的にビルトインされている変えることができないと思われていたものを変えることができる可能性があることに気づいた。
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対談「日本人の『脳』がつくる『同調圧力』」は「文藝春秋」2月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されている。対談の最後には、師たる鴻上さんからチルドレンの中野さんへの切ないクレームが。
日本人の「脳」がつくる「同調圧力」