〈『新型コロナウイルス』感染者、再急増により年末年始行事の十二月二十七・二十八日「稲川会納会」 新年一月七日「稲川年頭挨拶」を感染拡大防止対策として『中止』と致します。(略)令和二年十二月二十二日 稲川会総本部発〉
新年を迎えて、家族や親戚、友人らとの集まりがあれば、徳利の酒を盃で酌み交わす宴席が付き物だ。
暴力団社会でも、新年会が開かれ親分からお祝いのお神酒をいただき新年がスタートする組織が多いが、冒頭で紹介した指定暴力団稲川会の「総本部御通知」でも分かるようにこの業界も、今年は事情が違うようだ。
しかし、暴力団構成員にとって「盃」は、こうした恒例行事とは別に、親分と子分の間で盃を交わして正式な組員になるという一生に一度という重要行事においても使われる。
喫茶店で簡単に「仮盃」を交わして済ますことも
「親分に自分の命を預ける『親子盃』を交わすとなると、紋付き袴の正装で儀式に則って盛大にお披露目するというのが映画などで描かれているため、一般の人たちはこうしたイメージを持つかもしれない。しかし、このような仰々しさがあるのは組織の最高幹部クラス。傘下組織のなかには、喫茶店などで簡単に仮盃を交わして済ますということも多い」
関西に拠点を置き、多くの組員を抱える指定暴力団幹部は、そう語る。
「有望な若い衆がいて、なるべく早く組織に加入させたいという時などは、ほかの組織に行かないようにこうして唾をつけておく。これは『仮盃』と呼ばれる。後に時期を見て正式に本盃ということになるが、どこでも紋付き袴でということはない」(同前)
続けて、暴力団社会での盃とは「不条理を飲み込むということだ」と解説する。