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暴力団員を認定する時、警察は「盃」を気にするか?

 暴力団業界において、「親子盃」を交わすことは正式な組員になるという重要な行事だが、警察当局は冷ややかな視線を向けている。

 1992年に施行された暴力団対策法では、広域に拠点を持ち多くの組員を抱え、常習的に違法行為を行う恐れがある暴力団を「指定暴力団」として認定している。繁華街の飲食店などからの「みかじめ料」という用心棒代の徴収などを禁じているほか、対立抗争事件が起きている場合には事務所の使用を制限するなど、様々な規制がかけられる。

 指定暴力団として指定するためには、「(1)暴力団の威力を用いて活動資金を獲得している」「(2)傷害や恐喝、薬物取引など暴力団特有の事件の前科のある者が一定の割合で所属している」「(3)トップの下に階層的に組織が構成されている」といった要件が求められている。

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 このうち2番目の要件を満たすためには、まずどの組織にどういった構成員がいるのか、そのメンバーを確定する必要がある。構成員として認定するにあたって、「親子盃」は最も分かりやすい確認方法のようにも思える。

(写真はイメージ)©iStock.com

暴力団業界とは「盃」の解釈が違う警察当局

 しかし、暴対法施行前から暴力団犯罪捜査を指揮してきた警察当局の捜査幹部OBは、次のように打ち明ける。

「盃は彼らにとっては重要なのだろうが、指定暴力団として指定するにあたっての情報収集とは関係なく、さほど重要視していなかった」

 さらに、情報収集の実務について解説する。

「盃を交わしたところで構成員として安易に認定するのではなく、暴力団としての活動実態のほうが重要。実際に暴力団特有の事件で逮捕した者がいたとする。この者にシノギ(資金獲得活動)などについても聞いて行く。最も確実なのは、活動実態について認めさせること。

 生年月日から始まり本籍地、経歴など。そして、どこの暴力団にいつごろ加入して、その後の主な活動実態について話をさせる。それを本人に認めさせて調書にまとめる。『自認調書』といって、こうしたことを着実に積み上げて行くことが大切だし、最も確実だ」(同前)

 暴力団業界では最重要である親子盃だが、警察当局は全く違う解釈で捉えているのが実情だ。(敬称略)