2003年6月20日に発生した、福岡市に住むAさん(41)と妻、2人の子供が殺害された「福岡一家4人殺人事件」について、福岡県警東署に設置された捜査本部は、同年10月以降になると、「中国人元留学生3人による強盗殺人事件」であるとの見方を強めるようになった。

 それは逃亡先の中国で身柄を拘束された、元日本語学校生の王亮(21)と、元私大生の楊寧(23)、さらに日本で逮捕された元専門学校生の魏巍(23)の3人が、カネ目当てで立案、実行した犯行であると、結論付けつつあったということである。

左から元日本語学校生の王亮、元私大生の楊寧、日本で逮捕された元専門学校生の魏巍

福岡県警は「中国人3人の単独犯行」であると結論付け

 この時期、福岡県警と福岡地検は捜査員と検事を中国に派遣しており、現地当局による王と楊の取り調べ状況について、詳細な情報を得ていた。それらを総合して、彼ら以外の第三者が関与した可能性が、排除されていったのだ。

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 そしてついに、福岡県警は04年1月8日午後2時に、別の強盗罪などで公判中の魏巍を、A家についての強盗殺人、死体遺棄、住居侵入容疑で再逮捕する。

 ここで出てきた魏の強盗罪については改めて記すが、A家に対する強盗殺人容疑での再逮捕は、福岡県警が“本件”である一家4人殺人事件について、「中国人3人の単独犯行」であると実質的に結論付けたとの意味合いを持つ。当時の福岡県警捜査一課長は、魏の再逮捕後に行った記者会見で次のように語った。

「これまでのべ1500人に事情聴取を行い、この(殺人事件の)関係で中国人13人を検挙したが、被疑者や被害者との接点は見出せない。捜査は続けるが、3人による単独の犯行で納得がいく」

納得のいかないAさんの親族による告発状

 こうした捜査の結末に納得のいかないAさんの親族は、同年2月3日付で、当時の福岡県警本部長宛に告発状を提出し、受理されている。以下、その内容を記す。(※一部を抜粋。氏名、住所は原文実名。ここに出てくる「被告発人」は、魏、王、楊ではない第三者で犯行に関与した者のこと)

〈被告発人 氏名不詳

 

 第1 告発の趣旨

 

 被告発人の下記行為は、刑法240条、130条及び190条に該当すると思料するので、直ちに厳正な捜査を遂げ、被告発人を厳重処罰されたく、告発する〉

 この文面に続き、A家の家族4人を殺害、現金などを奪った状況、遺体を海に遺棄した状況について触れられている。さらに告発状は次のように記されていた。