「3名だけが犯人であるとは到底考えられず」

〈第2 告発の事情

 

 1 平成15年6月19日から20日頃、福岡県福岡市◯◯×丁目×―×所在のA宅において、A(当時41歳)、その妻、B(当時40歳)、長男、C(当時11歳)、長女、D(当時8歳)が何者かによって惨殺され、4人が、同月20日午後2時25分頃、全員手錠をかけられ、金属の重しをつけられた状態で、博多港に沈められているところが発見されました(以下「本事件」といいます)。

 

 2 告発人は、本事件の被害者であるAの従兄弟に当たります。告発人は、Aとは年齢も近く、小さいときから兄弟のようにして遊んできました。また、Aが東京の焼き肉屋で働いていたとき、告発人も同じ会社で働いてきました。とくに昭和63年頃から約2年間、Aと告発人は東京都港区麻布十番で一緒に暮らすなど、まさに寝食を共にしたのであり、Aにとって、告発人はもっとも近い存在でした。

 

 3 本事件では、元専門学校生の魏巍、元私立大留学生の楊寧、元日本語学校生の王亮の3人が実行犯であるとされ、本年1月30日には、魏巍が強盗殺人罪で福岡地方裁判所に起訴されました。また、楊寧と王亮の2名については、昨年9月24日、中国公安省によって本事件の犯人として全面的に自供したと伝えられています。

 ところで、報道によれば、貴本部及び福岡地方検察庁は、本事件の犯人は上記3名だけであると断定し、今後、捜査は終結へ向かうと伝えられています。

 

 4 しかし、本事件において上記3名だけが犯人であるという見方に対しては、以下のような重大な疑問点が多数、存在します。

 

 5 上記3名は、Aの留守時に強盗に入ったにもかかわらず、Aの帰宅をわざわざ待つという不自然な行動をしています。しかも奪ったものは現金4万円程度であり、室内にあったカメラやテレビなどの金目のものには一切手をつけず、逃走を図ったと聞いていますが、これは不自然です。

 さらに、上記3名がAを狙ったのは、「金持ちそうだからA宅を狙った」ということですが、Aの自宅周辺には、もっと金持ちの家がたくさんあり、このことは外からこの付近一帯を見ればすぐに判明します。果たして、強盗が真の目的だったのか、到底納得がいきません。

 

 6 上記3名は、福岡県福岡市◯◯×丁目×―×所在のA宅から、家族4人を遺棄した博多港まで、A所有の乗用車1台で2回に分けて遺体を運んだと聞いています。しかし、A宅の駐車場は非常に狭く、仮に遺体を運ぶとした場合、乗用車を道路にいったん出さなければ、とても積める状況にありません。例え(原文ママ)、人通りの少ない時間帯だとしても、そのような危険を冒すものでしょうか。一般的に考えるなら、乗用車2台以上で一度に運んだと考えるほうが自然なのではないでしょうか。

 

 実際A宅近くでは、本事件の当日、不審な車両が止まり、中から背の高い女性が降りてきたという目撃証言やA所有の乗用車によく似た乗用車と、別のもう1台が猛スピードで走行しているところを目撃されています。それらの不審車両が本事件とまったくの無関係であるとは思えないのです。

 

 7 楊寧と王亮は犯行の数日後に、福岡空港から上海に帰国しています。正規の航空運賃だと、2人で片道約12万円必要です。金に困って強盗殺人まで犯した人間が、その逃走資金をどのように捻出できたのでしょうか。また、4人の遺体を海に沈めるために使用した手錠や鉄アレイの購入費用はどうしたのでしょうか。さらに、魏巍は「報酬は1万円しかもらっていない」と供述したと聞いています。それは、他に報酬が入る当てがあったことを意味するのではないでしょうか。

 

 8 以上のとおり、本事件においては、上記3名だけが犯人であるとは到底考えられず、これ以外に何らかの者(被告発人)が上記3名と共謀し、上記3名に殺害及び強盗の実行行為を行わせたことが明らかです。

 告発人は、被害者らの近親者として、本事件の事案の真相が明らかにならず、真犯人の一部が逮捕されずにいる状態を黙視することは絶対にできません。被害者一家の無念さを思うとやむにやまれません。今も被害者らの姿が夢の中に登場するのです。

 

 したがって、告発の趣旨どおり、厳正に捜査を遂げ、残る真犯人を解明し、これを厳重処罰するよう強く求めるものです〉