2024年12月に戒厳令を出したことでも知られる韓国大統領の尹錫悦氏だが、実はパートナーである金建希氏も政局に影響を及ぼすほどの「いわく付きの人物」であることをご存知だろうか?
「彼女の来歴」や「大統領との特殊な関係」を、朝日新聞元ソウル支局長の牧野愛博氏の新刊『韓国大乱』(文春新書)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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「ドイツモーターズ株価操作疑惑」
いったん鎮火したと思われた金建希氏を巡る疑惑だったが、次に「ドイツモーターズ株価操作疑惑」が持ち上がった。
金氏は2020年4月にこの疑惑で告発されたが、文在寅政権が当時検事総長だった尹氏を追い落とす目的があったとされた。ソウル中央地検は2024年10月、金氏の口座が株価操作に利用されたのは事実だが、主犯らとの共謀の事実は認められないとして不起訴処分とした。だが、「共に民主党」は「検察に捜査の意思がない」と批判し、捜査継続を求めた。
さらに火の手が拡大したのが、政治コンサルタント、明太均氏と金建希氏との関係だった。明氏は世論調査会社も経営していた。韓国では政党の公認候補選びの際、世論調査結果を参考にする。明氏は特定の政治家に有利な世論調査結果を出すとされ、様々な政治家との交流がうわさされていた人物だった。
また、韓国の政治家は今でも、占いに頼る場合が数多くある。政界関係筋は「韓国は激烈な競争社会。政治家に限らず、企業経営者や受験生の親なども、何かあると高名な占い師にすがり、精神的な安定を求めたがる」と語る。明氏は金氏に対し、尹氏と結婚することが、金氏の幸せな人生につながるといった趣旨の発言を繰り返し、歓心を買ったという。こうした事実の積み重ねが、金建希氏が与党「国民の力」の公認候補選びに介入したのではないか、という疑惑を呼んだ。