新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づき、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県が緊急事態宣言の適用期間に入ってから17日で10日が経った。政府は13日に、緊急事態宣言の対象地域を栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県に拡大したが、感染拡大の波は止まる様子がない。
国際政治学者の三浦瑠麗氏は緊急事態宣言の再発令が検討されていた1月2日、「新型コロナが『有事』ならばやるべき医療体制の組み直しをやらず、平時と有事のあいだのグレーゾーンの質を判断してそれに対応する能力もなく、偽りの解としての竹槍精神的な自粛要請に飛びつく政治を目の前に、日本人が後世振り返るべき参照地点としての現在、緊急事態宣言発出に反対しておきます」とツイートし、緊急事態宣言の再発令に疑問を呈した。宣言後、各都県では繁華街の人出に目立った減少はなく、医療提供体制の逼迫は続いている。果たして日本はコロナとどう向き合っていくべきなのか。三浦氏に聞いた。(全2回の1回目/後編はこちら)
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Q1.年明けの「緊急事態宣言」発出は正しかったのでしょうか?
まず、緊急事態宣言というのは大きな「リスク」と「コスト」を伴うものです。もちろん、専門家が指摘する通り、人との接触を減らせば感染のリスクは減り、感染の拡大を抑えることはできるでしょう。しかし、そのために生じる社会全体のコストについて、今回の宣言は十分に考慮された結果の判断だったと言えるでしょうか。午後8時以降の営業を自粛する飲食店に対して、「協力金」を支払うということだけはスムーズに決まり、そのことに世の中の関心が集まりましたが、そのことで却って全体像が見えにくくなっている気がします。
昨年4月に初となる緊急事態宣言が発令されてから7カ月あまりが経過しました。本来であれば、現在は、この時の緊急事態宣言について、それによって生じた経済的被害や、その被害を抑えるために政府が行った諸々の経済対策の効果が検証されてしかるべき時期です。しかし、そうした「費用対効果」が、しっかり見える形で、今回の緊急事態宣言についての議論が交わされることはなく、街の人たちの声や飲食店側の要望に応える形でしか、議論がなされなかったのです。
判断基準が「感情論」になってしまい、全体像が見えていない
これは政府だけでなく、都道府県各自治体やメディア全般にも言えることですが、判断基準が感染症拡大のみに目を向けた「感情論」のようなものになってしまっていることにも原因があるでしょう。緊急事態宣言を発令したら、感染者数はどう減るかだけでなく、それによって経済はどうなるのか、社会にどんなひずみが生まれるのか、その全体像を見なくてはいけない。
そもそも昨年の第一波収束の頃から感染症の専門家の見通しでは、秋冬になれば感染が再び拡大することはほぼ確実視されていました。そして、その感染拡大の規模も、かなり具体的な数字で示されていました。しかし、政府と各都道府県の間で連携がとれておらず、感染再拡大に向けて医療体制を拡充する仕組みを整えておくことができなかった。