昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

Q2.なぜ医療崩壊が起こりかけているのでしょうか。どのような医療体制の拡充が必要だったのでしょうか?

  東京都の小池百合子知事は1月15日の記者会見で、新たに3つの都立病院と都が出資する公社病院の一部を新型コロナウイルス対応の「重点医療機関」にすると発表しました。しかし、これも遅きに失した感があります。病床の確保については、国ではなくて、各都道府県知事が自分たちの都道府県内のリソースを適正配分するという話だったわけですが、都知事が自身の権限でできる都立病院など公立の病院のリソースの組み換えを行うことさえ今になるまでできなかった。「なぜこれまでやってこなかったのか?」というのが普通の疑問ですよね。さらに言えば、コロナ病床が第一波の時より減少していたという現実も意味不明です。日本の医療機関は、コロナと通常医療との切り分け、病院相互の調整による負担共有を自らの責任とリスクにおいてできないという性質を持っています。感染の度合いに応じて病床数を増減させるというのであれば、感染拡大期にコロナ病床が急激に立ち上がるような体制を考えておかなければいけなかった。病院の自主性に任せていては、医療にも社会にも大きな支障が出るのは当たり前です。

会見を行う小池百合子東京都知事 ©️AFLO  

実現可能な選択肢さえ検討しなかった

 病床の確保については、非常時を想定した仕組みがないことが一番の問題ですが、それでもできることはたくさんあったはずなのに、「知恵が足りなかった」ということでしょう。第一波の後に医療法を改正すべきだったという話がありますが、これは間に合わなかったことをいったん理解するとして、なぜ既に専門家から提案されていた即座に実現可能な選択肢さえ検討しなかったのか、疑問です。

小林慶一郎氏

 例えば政府の分科会のメンバーでもある経済学者の大竹文雄さんと小林慶一郎さんは、昨年8月の時点で、再び緊急事態宣言を発出して10兆円規模の損失を出すよりは、「もっと大きな金額の補助金をもっと簡単な手続きで」感染者を受け入れる病院におろすべきだと訴えていた。病院の行動変容を引き出すため、病床数規模に応じて「前金」で5000万円~3億円を出すほか、確保病床への受け入れを拒んだ場合には返還を求める前提で手厚い補助金を出すべきだとしています。1兆円弱の財政コストで数十兆円の経済損失を回避する。そのために、前例のない支援を行うべきだとしたのです。この提言に沿って補助金を出していれば、病床の確保もスムーズにいったはずです。しかし結局、政府にはこの案は採択されなかったし、知事たちからも交付金を独創的に使おうという発想は出てこなかった。

都知事と病院との折衝については全く報じられないのはなぜか?

 例えば東京都は、病院に「お願い」を通じて、重症患者を少しずつ分散するというやり方をとったため、通常医療とコロナ医療との切り分けは各病院に任され、その結果として各病院はポジションをとれず、非効率な方法になった。その結果として、多くの病院の経営が悪化し、病床も不足する状況になってしまいました。

©iStock.com

 なぜこんなことになってしまったのか、その内幕は十分検証されなければならないと思うのですけれど、実際、小池都知事がどういうふうに病院と折衝しているのかという話は、全く報道されません。国家権力の中枢の会話は「だだ漏れ」状態で、新聞や週刊誌でも明らかになっているのに、都知事と病院との折衝については全く報じられないというのが現状なのだと思います。

z