新型コロナウイルスの感染拡大を受け、菅義偉首相が行った2回目の「緊急事態宣言」。1月7日、東京・JR新宿駅東口前の「アルタ」や「歌舞伎町一番街」付近の大型ビジョンには首相会見の映像が映し出されていた。飲食店に対する時短営業の要請や若者の外出自粛を呼びかける菅首相の声が響き渡ったが、その画面を気にかける人はほとんどいなかった。

1月14日の歌舞伎町にて Ⓒ文藝春秋

 2度目の緊急事態宣言から1週間が経った日、新宿・歌舞伎町は若者で溢れていた。大衆居酒屋では若者が酒盛りをし、ホストクラブやキャバクラ、ガールズバーなど「接待を伴う飲食店」のほとんどは時短要請を無視して通常営業に踏み切っていた。

 店舗の関係者たちから聞こえてくるのは、「店を開けたいわけじゃない。でも、協力金だけではやっていけない」という嘆きの声だった——。

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1月8日、新宿歌舞伎町にて Ⓒ文藝春秋

「お行儀の悪い街だから」

「ゴチャゴチャうるせえよ!」

 1月13日21時頃、新宿・歌舞伎町の入口ゲート付近で外出自粛を呼びかける5人ほどの区役所職員は、暴言を浴びていた。歌舞伎町への立ち入りを阻止しようとする職員たちの横をすり抜けて、カラフルなマスクをつけた若者が次々に雑踏の中へ消えていく。

1月8日、新宿・歌舞伎町で ©️文藝春秋

「宣言前の12月に比べれば人出は3分の1に減ったけど、1回目の宣言の時よりは明らかに多い。今回の特徴は、歌舞伎町で働いていたり歌舞伎町に通い慣れた10代、20代の若い子がコロナを気にしないで朝まで遊んでいること。そもそもこの街って“お行儀の悪い街”だから、大人の言うことを聞かないのは仕方ないよね」(キャッチ店員)

1月8日新宿歌舞伎町にて Ⓒ文藝春秋

店を閉めても100万円の家賃がかかる

 たしかに、大手チェーン居酒屋や人気焼肉店など多くの飲食店は20時で閉店しているものの、一部の激安居酒屋は時短営業要請を無視して営業を続けており、店内は若者で溢れ、“密”状態だった。

1月8日、新宿・歌舞伎町で ©️文藝春秋

「店を開けているのは、他が閉店して稼ぎ時だからというのが正直なところ。歌舞伎町は家賃も割高で、うちも毎月100万円近く払ってる。アルバイトも10人以上雇ってるし、外国人のスタッフは故郷に仕送りしてたり、皆それぞれの生活がある。20時までで閉めていたら商売にならない。何より、街に若いお客さんがこれだけ溢れてる。寒いし、外にずっといたらそれこそ体調壊しちゃうんじゃない?」(居酒屋店主)