徴用工賠償訴訟で日本企業の資産を差し押さえた韓国の裁判所が、今度は慰安婦賠償訴訟で日本政府に損害賠償支払いを命じた。
「反日認識と歪曲史観」の過去志向が際立つ韓国だが、文在寅大統領は「建設的かつ未来志向型の日韓関係」をお題目のように唱えている。未来志向という握手の手を差し出しているが、その手は我々日本人の顔に泥を塗っている。
文大統領の白々しい「未来志向」
韓国の文在寅大統領は14日、韓国大統領府で日本に新任大使として赴く姜昌一大使に信任状を授与し、「問題が生じても、未来志向型の関係発展の努力をしなければならない」などと語った。
この日の文大統領は、離任挨拶で訪れた冨田浩司・駐韓日本大使とも会談。「韓日は最も近い隣人」「両国間のコミュニケーションと対話、交流協力は必ず発展させ続けなければならない」と語った。文大統領は今年の新年辞でも「未来志向」を語っていた。
だが、一体、どの隣国のことを言っているのか。2018年10月末に大法院が徴用工賠償判決を出して以来、「三権分立」を盾に、日本政府との対話に一切応じなかったのは韓国である。
このほどの慰安婦賠償訴訟では、日本統治時代に応募により契約で働いた公娼制の軍慰安婦を奴隷制と同列に置いて、日本は「人道に反する罪に該当」とする有罪判決を出した。そして元慰安婦ら原告1人当たり、1億ウォン(約950万円)の賠償金支払いを命じた。
1億ウォンといえば、2015年末に安倍晋三政権と朴槿恵政権で合意した「日韓合意」の癒し金と同額だ。合意では「和解と癒し財団」を作り、日本が10億円を拠出して、存命だった47人の元慰安婦のうち35人が受け取った。日韓合意を「この合意では解決されない」として財団解散を命じたのは文大統領だ。「癒し金」では解決にならず、賠償金なら溜飲を下げて解決ということなのか。
日本に賠償金支払いを命じた判決のスゴい中身
判決は日本に対し「人道に反する犯罪に相当」と言い放った。
そもそも国家には、他国の裁判で裁かれないとの国際法の原則「主権免除」がある。しかし判決では、日本は慰安婦問題で主権免除されないとした。「主権免除理論は、その後ろに隠れ賠償と補償を回避するような機会を与えるために形成されたものではない」(判決要旨)というのだ。
その理由は慰安婦制度が「強行規範」違反であるからだという。「強行規範」は条約法であるウィーン条約で定められた「いかなる逸脱も許されない国際法上の規範」を指す。これは奴隷制や奴隷貿易の禁止などのことで、「強行規範」に反する条約は無効とされる。