1ページ目から読む
3/4ページ目
理論的には株価は下がるはずだが、下がらないのはなぜか
投資をするという場合、振り向ける先は株だけではない。人は債券を買ったり、はたまた金を買ったりもする。おカネは儲かりそうなところへ向かう。
だから一般的に言って、債券市場への投資を左右する長期金利が下落すると株価は上昇し、金利が上昇すると株価は下落する。長期金利とは取引期間が1年を超える債券などの金利を指すが、これが下がると、投資家は債券を買うよりリスクがある株式投資をした方が儲かると考えがち。だから株価は上昇する。反対に長期金利が上がると、リスクのある株式投資よりも債券を買った方が得と考えるので、株価は下がる傾向にある。
足元で長期金利が上昇している。投資家が注目する米10年債の利回りは10カ月ぶりに1%の大台を上回った。理論的に考えると株価は下がるはずなのだが、今の株式市場はびくともしない。
「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」がある
金利上昇には「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」がある。景気が良くて企業や個人が積極的に借り入れをし、その結果として金利が上がることを「良い金利上昇」という。一方、「悪い金利上昇」とは借り入れコストが上昇して企業が資金調達を抑制、このため成長力が鈍り、株価が下落することをいう。
コロナ禍で多くの企業の資金需要は細っている。だから現状の金利上昇は理論的に言えば「悪い金利上昇」の局面のはずなのだが、市場参加者は景気を刺激するための財政出動が実行されているから金利は上昇していると解釈し、現状を「良い金利上昇」と捉えているのである。