職業柄つい、不謹慎な想像が膨らんでいった
竜王就位式は実に盛大かつ華やかだった。
会場には一般参加の将棋ファンも大勢(女性率の高さにもびっくり)。壇上には近年の将棋人気を牽引する、それぞれに個性的なスター棋士が勢揃い。加えて、新聞社(主催)の代表取締役会長が、証券会社(特別協賛)の執行役員が、対局開催地代表の渋谷区区長が……といった様子を観察するうち、職業柄つい、不謹慎な想像が膨らんでいった。
もしも今、このセルリアンタワーが突然の嵐に見舞われて陸の孤島(クローズドサークル)と化し、殺人事件が勃発したら。役者は揃いすぎるほどに揃っているではないか。誰がどのようにして殺され、誰が犯人で、そして誰が名探偵役を?……という話を祝辞の中で、アドリブで披露したら大いに受けたのは幸いだった。調子に乗って、いずれ書く「館」シリーズの新作には「豊島」あるいは「将之」の名を持つ美少年を登場させよう、と公言してしまったのだが……これはまあ、乞うご期待。
さて、その豊島竜王。先ごろ羽生善治九段の挑戦を退けて見事、防衛を果たされた。この場を借りてお祝いを申し上げたい。
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「オール讀物」2月号の「『将棋』を読む」特集では、『うつ病九段』(文春文庫)が話題の先崎学九段と室谷由紀女流三段が、菊池寛の小説「石本検校」に登場する棋譜の謎に挑む様子を描いた北村薫さんのミステリー「菊池寛の将棋小説」、棋士との親交が深く腕前も有段の直木賞作家・黒川博行さんと将棋小説ブームの嚆矢となった『盤上の向日葵』の著者・柚月裕子さんが棋士の意外なエピソードを披露する対談などを掲載。
「作家と棋士」と題したグラビアでは逢坂剛さんのエッセイとともに伝説の棋士たちと文豪との交流を紹介するほか、佐藤康光九段が藤井聡太二冠をはじめとする群雄割拠の現状を分析するインタビューも!