『勇者ヨシヒコ』『今日俺』の福田雄一と宮藤官九郎の違い
宮藤官九郎さんは、『勇者ヨシヒコ』シリーズ(テレビ東京)や『今日から俺は!!』(日本テレビ系)といったドラマを手掛け人気を博し、映画『新解釈・三國志』もヒットさせた福田雄一さんと比較されることもあります。
福田雄一作品では役者のパーソナルな部分を出すなどして、演者自身のポテンシャルで果敢に笑いを取りに行くことが多いですが、宮藤官九郎作品では役者が真剣に演じる登場人物を、用意した“状況”へ放り込むことで起こる笑いという違いがあると感じます。
バラエティ番組では笑いを取るつもりもなく笑いを生み出す天然キャラであり、ドラマや映画では真面目に役にぶつかっていくタイプであろう長瀬智也さんには、宮藤官九郎作品との親和性が高かったのかもしれません。
鉄板方程式としてジャニタレにも継承
ちなみに、長瀬智也×宮藤官九郎タッグの大ヒット、そして相性の良さをテレビ・映画の制作サイドや、ジャニーズ事務所が見過ごすわけもなく、宮藤官九郎さんが手がけた作品に次々とジャニーズタレントが起用されるようになりました。
ドラマではV6・岡田准一さん主演で嵐・櫻井翔さんが助演した『木更津キャッツアイ』(2002年/TBS系)。TOKIO・松岡昌宏さん主演の『マンハッタンラブストーリー』(2003年/TBS系)。嵐・二宮和也さん主演で元関ジャニ∞の錦戸亮さんが助演した『流星の絆』(2008年/TBS系)。錦戸亮さん主演の『ごめんね青春!』(2014年/TBS系)。
映画では元SMAP・草彅剛さん主演の『中学生円山』(2013年)。生田斗真さん主演の『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』(2014年)。
特に『IWGP』の2年後に放送された『木更津キャッツアイ』が、若者の支持が厚く映画化もされるほどヒットしたため、ジャニーズタレント×宮藤官九郎の方程式が確立されたように思います。
ジャニーズ側からすれば宮藤官九郎脚本で“料理”してもらうことで、タレントのコメディスターとしての一面を引き出してもらえるという鉄板ルートができたわけですが、それは当然、スター性に満ち溢れた長瀬智也さんとセンスの塊であった宮藤官九郎さんのシナジーが原点にあってこそ。
長瀬智也さんのような逸材が表舞台から去るのは寂しくもありますが、最終作となる『俺の家の話』は長瀬智也さんも宮藤官九郎さんも並々ならぬ意気込みのはず。俳優・長瀬智也のラストステージ……しかと見届けたいと思います。