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 TOKIOメンバーが体を張って奮闘するバラエティ番組『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)では、それまでにも彼の天然キャラが発揮されていました。しかし、ドラマ内でそういった愛されポイントを引き出すのは至難の業です。当時の制作サイドとしては、彼をドラマに出して女性をキュンキュンさせるのは容易かったでしょうが、彼の演技で笑いを取るというのは宮藤官九郎さんの脚本があってのもの。

 池袋のアンダーグラウンドを描いた作品に、コントのようなコメディ要素を多分に取り入れたのは、宮藤官九郎さんのセンスです。しかもコメディに振り切るわけではなく、バイオレンスやサスペンスのシーンはきっちりシリアスに描き、ギャグシーンではきっちり笑いを取る――そのバランス感覚が最強だったのです。

Paravi『池袋ウエストゲートパーク』より

『タイガー&ドラゴン』『うぬぼれ刑事』…長瀬×宮藤作品は過去に5作もある

『IWGP』がヒットしたことで、それ以後、長瀬智也主演・宮藤官九郎脚本作品は何作も生み出されました。ドラマでは『タイガー&ドラゴン』(2005年/TBS系)、『うぬぼれ刑事』(2010年/TBS系)。映画では宮藤官九郎さんが脚本だけでなく監督も務めた『真夜中の弥次さん喜多さん』(2005年)、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(2016年)があります。

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『タイガー&ドラゴン』で長瀬智也さんが演じたのは、落語に感動して落語家に弟子入りするヤクザ。ベースがヤクザのため、『IWGP』のマコトに通ずる従来の彼の魅力であるワイルドさを存分に発揮しつつ、古典芸能の世界で邁進する役という新境地を開拓しました。今作『俺の家の話』もプロレスと古典芸能・能楽ですから、『タイガー&ドラゴン』とは類似点が多いです。

©️文藝春秋

『うぬぼれ刑事』での長瀬智也さんは、うぬぼれが強い恋愛体質の刑事役。毎回毎回惚れた女性が犯人で、フラれて終わるという一話完結コメディでした。稀代のイケメンに非モテ役をあてがうという宮藤官九郎さんのセンスにより、長瀬智也さんはまたもや新たな役柄に挑戦することに。最強のモテ男・長瀬智也さんに非モテキャラがつとまるのかという不安要素はあったものの、それは杞憂で、『うぬぼれ刑事』の彼は見れば見るほど愛すべき“残念な男”だったものです。

 時代劇コメディ『真夜中の弥次さん喜多さん』では同性愛者役、地獄が舞台のコメディ『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』では赤鬼役。毎度毎度の宮藤官九郎さんからの無茶ぶり設定に対し、長瀬智也さんは120点を叩き出してきました。