ここで実際に遭難事故が起きていた
一歩間違えれば、我々は国道上で遭難していたかもしれない。そんなことを考えて国道488号と匹見峡のことを調べてみると、なんと、過去に遭難事故が実際に発生していた。正確には、近くのスキー場で遭難し、国道本線上で発見・救助されるという事故だった。
その事故が起きたのは2008年2月3日夕方のことだった。広島県安芸太田町の国設恐羅漢スキー場で、スノーボーダー7人が行方不明になった。地元の警察や消防、自衛隊などが900人態勢で捜索した結果、2日後の朝、島根県益田市匹見町の国道488号上で7人が発見され、全員が無事に保護された。
遭難した7人は、偶然見つけた廃校の校舎で焚き火をして暖をとり、天候が回復した5日になって校舎を出て歩いていたところを発見された。遭難から2日間が経過していたが、7人全員が軽傷程度で無事発見されたのは、奇跡といっていいだろう。
この事件を知り、もう一度、雪のない時期に匹見峡を訪れた。目指したのは、遭難者が暖をとり2晩を過ごしたという廃校だった。その廃校は現存していて、床板を剥がして燃やしたと思われる焚火の跡が残っていた。この廃校がなければ、7人は助かっていなかったかもしれない。
現在の国道488号匹見峡区間は、落石などの危険性が大きいため、通年通行止になっている。島根県側にゲートが設けられていて、冬に限らず夏でも通過できないので注意が必要だ。
国道本線上を車で走行していたとしても、もしも積雪にハマったり側溝に落ちて動けなくなってしまったら、冬場は遭難する可能性だってある。雪道では冬用タイヤやチェーンといった装備のほか、低速で慎重に運転を行うことが最低限必要だが、それ以上に大切なことがある。それは、大雪の時には可能な限り外出を控えるということだ。こうした判断こそ最も大切だということを、自戒を込めてお伝えしたい。
撮影=鹿取茂雄