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「ドアが開かない!」一歩間違えれば谷底へ転落…あの日、国道488号でのドライブは“命懸け”だった

2021/02/06

genre : ライフ, , 娯楽, 社会

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無事に峠を越えられるのか……

 島根県側最後の集落に差しかかった頃には、積雪は激しくなっていた。歩いている人の姿は皆無で、集落の手前でタイヤの跡も消えてしまった。路面は一面真っ白で、どこまでが道でどこからが田んぼか、分かりづらくなった。20センチほどの積雪に2本の線を残して、488号を進んでゆく。

島根県側最後の集落に差しかかると、路面は一面真っ白になってきた
20センチほどの積雪に2本の線を残して進む
最初の難所、匹見峡までもう少しだ

 やがて最初の難所、匹見峡が近づいてきた。右は山肌、左は谷底で、ガードレールはない。谷底は遥か下で、落ちたらまず助からないだろう。普通に走っても酷い道だが、雪がさらに拍車をかけている。

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 雪の重みで今にも倒れそうな木の下をくぐったあたりで、この先、三坂峠を越えて広島県へ抜けられるのか、不安が徐々に大きくなってきた。とはいえ、一人であれば引き返していたかもしれないが、友人が同乗しているという安心感があった。いざとなれば、車を押してくれるだろうと思い、そのまま進むことにした。

いよいよ本格的な“酷道”の始まりだ
右は山肌、左は谷底。対向車が来てもすれ違うのは困難だ

目に見えて積雪が多くなってきた

 降り続いていた雪は小降りになってきたものの、目に見えて積雪が多くなっていた。30~40センチはあるだろうか。降ったばかりの新雪なので、軽くて滑りにくいのが救いだ。

 積雪の道を走る時は、滑ったり、雪にハマって動けなくなる心配だけではなく、雪の下に隠れているものにも警戒しなければならない。これだけの積雪があると、落石や側溝も見えなくなる。道の中央をゆっくり走るしかないが、時々、落石に乗り上げて車体が大きく揺れた。

雪は小降りになってきたが……
積雪は30〜40センチほどに。左側には「落石注意」の看板も

 雪の重みで木や竹が倒れ込んでくることもあるので、それらをそっと車で押しのけながら進む。不意に木の上に積もっていた雪が落ちてきて、視界が真っ白になることもあった。対処法としては、とにかくゆっくり走る以外になかった。