2021年を迎えても収束が見えない新型コロナウイルス。昨年から感染の拡大を防ぐ手段として、従業員の在宅ワークを導入した企業も少なくない。通勤中や仕事中に不特定多数の人々との密集が避けられるメリットがあり、当初は「満員電車から解放されてうれしい」という声もあった。しかし、全出社から在宅ワークに切り替えて1年近く経った今、ある “しんどさ”を抱えている人が増えているという。(取材・文=真島加代/清談社)
◆◆◆
橋本紗季さん(仮名・31歳)が勤務する広告会社では、昨年から在宅ワーク中心になった。
「うちの会社は対応が早くて、2月から在宅になりました。小さな会社なので、フットワークが軽いのはありがたかったです。初めの2週間は、出社せずにすんでラッキー! なんて思っていたんですけど、月日が経つにつれて1日中鬱々とした気持ちで過ごすようになりました」
仕事モードに切り替えられない
とくに彼女を気落ちさせたのは「仕事のオンオフの切り替えができないこと」だったという。毎朝8時に起きて9時に就業してもまったく集中できず、16時くらいまでぼんやり過ごしてしまう日が増えた、と橋本さん。
「コロナ禍でも毎日出勤しなければならない人の不安に比べたら、贅沢な悩みだと思います。でも、どんどん夜型になっていく生活や、狭いワンルームにずっと一人でいる環境に、人に会えない寂しさも重なって、突然涙が出るときもありました」
自身を“まじめ系クズ”と称する橋本さんは、仕事モードに切り替えられないダメな自分に対して「どうしてちゃんと仕事ができないんだろう」と自責の念に駆られ、マイナス思考に囚われてしまうという。
「出社していた頃は、絶対に自宅に仕事を持ち帰らないようにしていたんです。会社なら就業時間も決まっているし、人の目もあるので怠けようがない。でも、出社しなくなってからは、自己管理ができない自分や、夜型になって夜中にも仕事をしてしまう状況もツラくて……。自己嫌悪は精神衛生上よくないのでやめたいのですが、なかなか改善できないですね」