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北海道2区の候補者擁立見送りが今後の火種になる可能性

 しかし、だからといって「菅おろし」が始まるわけでもない。今国会での野党の対応を見ていればわかるように、このコロナの中で、「菅おろし」を始めたら、世論の強烈な反発があるのは火を見るより明らかです。自民党は「なにやってんだ」という声が起こることが怖いのです。過去そのパターンで、何度も痛い目にあってきましたから。「身内の嫌気」がいちばん選挙に影響することを彼らは骨身にしみてわかっています。

官房長時代

 ただ、「菅おろし」がすぐに活発化することはないにしても、今後の火種としてくすぶってきそうなのは、収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相の議員辞職に伴う北海道2区の衆議院補欠選挙(4月25日投開票)で、自民党が候補者擁立を見送ったことでしょう。

 2000年の秋に、春は4月、秋は10月に統一補選を行う方式になって以降、補選で自民党が候補者擁立を見送ったのは2回しかありません。1回目は2000年の小野寺五典氏の議員辞職に伴う補欠選挙。このときに候補者擁立を見送ったのは、議員辞職した小野寺氏の議席をあけておこう、もう一度再起の芽を残そうという理由でした。

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「悩みに悩み、断腸の思いだった」候補者見送り

後藤謙次氏 ©文藝春秋

 そして2回目が、2016年の宮崎謙介氏の議員辞職に伴う補欠選挙です。この時は自民党の中では候補者を立てるべきという声がとても強かった。小選挙区制度のもとでは、議席を一度明け渡すと、なかなか取り戻せません。宮崎謙介氏の件は個人の不始末だから、まったくスキャンダルとは無縁の候補を立てたほうがいいという声もあったのです。しかし当時の谷垣禎一幹事長が、猛烈に反対して、見送られました。その後、同選挙区は補選で勝った野党の泉健太氏の指定席になりました。

 今回の補選でも、候補者は出した方がよいという声が自民党内では圧倒的に多かった。しかし、山口選対委員長が「悩みに悩み、断腸の思いだった」と語り、見送る決断をしました。この決断の背後には菅首相の意向もあったのでしょうが、この「見送りの判断」がのちのち政権運営に影響を与えるかもしれません。それほど今回の候補者擁立見送りは、党内で評判が悪いのです。