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しこりの残らない選考発表、どうすれば?

 戦ってもいないチーム同士の優劣を机の上で議論するくらいなら、いっそのこと当事者同士で実際に試合をしたほうがフェアだろう。

 本質的には「招待試合」なのに選考内容にしこりが残る理由は、当落線上のチームの「優劣」を決めようとするからではないか。「総合力で東海大相模に分がある」などと発表せず、「主催者が甲子園に呼びたいから選んだ」でいい。出場校をチーム力の優劣で決めるなら選抜大会である必然性はなくなり、21世紀枠の存在とも矛盾するはずだ。

 大会要項には、「出場校選考基準」として下記の5項目が挙げられている。

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〈(1)大会開催年度高校野球大会参加者資格規定に適合したもの。〉

〈(2)日本学生野球憲章の精神に違反しないもの。〉

〈(3)校風、品位、技能とも高校野球にふさわしいもので、各都道府県高校野球連盟から推薦された候補校の中から地域的な面も加味して選出する。〉

〈(4)技能についてはその年度全国高等学校野球選手権大会終了後より11月30日までの試合成績ならびに実力などを勘案するが、勝敗のみにこだわらずその試合内容などを参考とする。〉

〈(5)本大会はあくまで予選をもたないことを特色する。従って秋の地区大会は一つの参考資料であって本大会の予選ではない。〉

 こうして読むと、前年秋の勝敗がすべてではないと強調するような文言が散見される。だからこそ、なおさら選考時の「どちらが上か?」という議論は不毛に思える。

 今回、選考が荒れる可能性があった近畿地区、中国・四国地区、21世紀枠については、選考理由を発表する際に落選したチームについて詳細に言及することはなかった。それが本来のあるべき姿ではないだろうか。

©iStock.com

 選出された32校は、すべて選考委員が自信を持って推薦するチームであり、甲子園でどのような戦いぶりを見せてくれるのか楽しみだ。選考材料になった秋季大会からセンバツ本番まで約4カ月ものインターバルがあり、まるで別のチームのように急成長するチームもあるだろう。選考時は当落線上だったのに、大会では優勝争いに絡むチームが出現することも珍しくない。

 センバツにはセンバツの楽しみがある。今後の大会では、しこりの残らない選考発表になることを祈りたい。

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