「組閣が決まったあとの異例の発表だったので正直びっくりした。でも、桑田と聞いて直観的に『これは菅野(智之・31)のためだろう』と思いました。菅野ほどのレベルになると、メカニック(投手が投球モーションに入ってからボールをリリースするまでの動き)を教えられるコーチがいませんから」
「菅野が宮本に聞くと思いますか?」
桑田真澄(52)が、15年ぶりに投手チーフコーチ補佐として巨人のユニフォームに袖を通すことになった。3度目の監督就任となる原辰徳監督(62)はセ・リーグ2連覇を果たしたものの、日本シリーズではソフトバンクに2年連続で4連敗。日本一奪還を掲げ、“最後の切り札”として招聘したのが理論派の桑田だった。
「桑田のコーチ就任は菅野のため」と語るのは、現役当時の桑田と同時期に選手、そしてコーチとして巨人に在籍した角盈男氏(64)だ。
「1軍の投手チーフコーチは宮本(和知・56)ですけど、菅野が宮本にメカニック的なことを聞くと思いますか? 宮本は選手のモチベーションを上げて集団をまとめることには定評がありますが、投手として菅野の域には達していません。まだまだ伸びしろがある菅野を指導できる人物を巨人OBから探すなかで『実績と理論を兼ねそなえた桑田しかいない』という判断になったのだと思います。投手陣をまとめるのが宮本、牽制などの技術は杉内(俊哉・40)、メカニックの指導と“菅野担当”が桑田、という分担になるでしょう。
桑田はあの小さい体を200%フル稼働させる投球フォームで上り詰めたピッチャーです。菅野はまだ体の全てを使いきれていないので、菅野に桑田の経験と理論が加われば……という狙いがあるはず。『コーチ桑田』の評価は、菅野を伸ばせれば成功、伸ばせなければ失敗、になるでしょうね」
桑田のコーチ像を考える上で、角氏がコーチだった1997年に「桑田にブルペンで“試験”をされた」と興味深い逸話を教えてくれた。
「コーチから見て桑田は手のかからない選手でしたが、逆にコーチを試すところがありました。僕も“試験”の経験があります。ブルペンでピッチング練習をしていた桑田のフォームが突然変わり、私が『今、フォーム変わったぞ。どうしたんだ?』と聞いたら、彼は一言『あっ、わかりました?』って言うんです。このコーチは自分のメカニックを理解しているか、自分のレベルに達しているかどうかを計るんですね。教えるのにも緊張感がある相手でした。どんなコーチになるのか楽しみです」