“棒歌唱”なのに心に響くワケ
さて、その楽曲を歌うシブがき隊の歌唱力だが、音程はあるけど抑揚はない。しかし、それがたまらなく良い! 清々しいほど一本調子な歌い方が、楽曲の軸となる「融通の利かないヤンチャ男子像」に見事にリンクしている。
ヤックンの反抗期全開な巻き舌と低音。フックンの甘えん坊な軽い高音。その極端な個性を、モックンの大人の階段を上る途中的な王道ボイスが包み込む。このハーモニーが「棒歌唱なのに震えるほどエモい」という奇跡を起こしているのである。
しかも3人ともシャウトは抜群に上手い。「ゾッコン!」「ドンマイ!」「アッパレ!」「イエッサー!」とヤケクソのように叫ぶ声は、まさに思春期の生命の爆発。嗚呼、私はこの記事で何度「思春期」と繰り返し書いただろう。それほど青臭い気持ちを蘇らせるパワーが凄まじいのである。
ジャニーズ事務所に受け継がれる「和の祭り感」
また、シブがき楽曲に一貫してあるのは「江戸っ子調・和の祭り感」。現在では、関ジャニ∞をはじめとした「西勢」にお祭り番長が移行した感があるものの、独特の「アッパレ・ジャポニズムテイスト」はしっかり受け継がれている。日本文化を感じるユニークなワードを楽しく歌いあげ、「一つの美」に変える。それはジャニーズ楽曲の素晴らしさの一つになっているのだ。
そう思えば、シブがき隊は決して「異質」ではなく、案外ジャニーズ音楽のど真ん中なのかもしれない。歌やダンスのテクニックとはまた別の、職人たちを遊ばせる器。それを持ったアイドルが、歌謡界を面白くするのである。
シブがき隊の活動期間は1982年から1988年。解散をしていなければ、来年でデビュー40周年だ。現在、モックンは日本を代表する俳優となり、フックンもタレントとして活躍中、ヤックンはなんと初孫が生まれたという。エエッ、ヤックン、おじいちゃんになるのか……。時の流れに遠い目にならずにはいられないが、おめでとうございます!
再結成は求めるのが野暮というものだろう。だって、思春期は一度きりだもの。