2021年1月5日午前0時。神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が発見された事件で、白石隆浩(30)の死刑が確定した。東京地裁立川支部での死刑判決後、一度は、弁護士が判決を不服として控訴したが、白石自身が控訴を取り下げていた。
事件の第一報は2017年10月31日朝で、「ネットで知り合った男女が死亡。遺体が発見された」というものだった。取材していた記者から電話で聞いたときには、見ず知らずの男女が自殺系サイトやSNSを契機に起きた集団自殺かと思った。しかし、時間が経つと、9人が個別に殺害された事件ということがわかってきた。
「死にたい」とつぶやく若者たち
筆者は事件に関するアンケートをとった。自殺や自傷行為、それに関連する事件の取材を続けているため、「死にたい」と思っている人たちが、事件をどう見ているか知りたかった。期間は17年11月20日から18年3月1日まで。Googleアカウントで利用できるアンケートフォームを使った。フォロワーの中には自殺を考えたり、未遂経験者がいると思われたため、そのアンケートを、筆者が利用するツイッターアカウントでつぶやいた。回答55件の中で、有効なメールアドレスが記入されていた回答は51件(性別は、男性13、女性38)。
座間事件ではツイッターで「死にたい」とつぶやく若者たちが報じられたが、SNSでつぶやいたことがある言葉(複数回答)としては、「死にたい」は48件、92.3%で最も多かった。ついで「消えたい」が42件、80.8%。「自殺したい」は32件、61.5%など。一時期、「ネット心中」が連鎖したが、そのときに使われた「一緒に死にませんか」(6件、11.5%)「一緒に自殺しませんか」(7件、13.5%)はいずれも10%前後となっている。
つぶやいたときの反応(複数回答)としては、回答44件のうち最も多いのが「反応なし」「無視」などが22件、50%。つぶやいても話を聞いてくれなかったユーザーが半数いた。「話聞きます」「死なないで」が同数で18件、40.9%。「ナンパされた」というのも5件、11.4%。自殺念慮のあるネットユーザーはナンパ対象になりやすいと言われているが、一定数がナンパされていることが示された。
「10人目になりたかった」
さらに言えば、自由回答で「10人目になりたかった」「殺された人の代わりに死にたかった」「私が代わりになれていたら」「羨ましい」「私も混ざりたかった」などと答えた人もおり、「被害者になりたい」人たちの存在は見過ごせない。
実はこの事件発覚前、筆者に取材されることを希望する女性がいた。東京都内に住む、華菜(仮名、30代)だ。取材できたのは事件後だったが、華菜は、白石と連絡はとっていたものの、アパートへは行かなかった人物だ。