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「娘にうつしたかもしれない」コロナ自宅療養の女性は“再会”の翌朝になぜ命を絶ったのか

「娘にうつしたかもしれない」コロナ自宅療養の女性は“再会”の翌朝になぜ命を絶ったのか

2021/02/08

genre : ニュース, 社会

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家族間感染防ぐのは「無理ゲー」

「自殺まで思い詰めなくてもよかった。新型コロナをうつしたとしても、生死に関わる事態になる確率は極めて低い」とコロナ治療に携わる医療関係者はいう。国内で感染者が確認され始めた昨年ならいざ知らず、基礎疾患がない若者であれば、新型コロナに感染しても無症状か軽症で済むことは分かってきている。

 感染力の強い新型コロナウイルスを同居する家族内で防ぐには相当の困難が伴う。たとえマスクをしていたとしても、食事をすれば、つばなどによる飛沫感染のリスクがあるし、会話を交わせば微細な飛沫が空気中を漂うことで生じるエアロゾル感染のリスクがある。

写真はイメージです ©iStock

「そもそも同居する家族への感染を防ぐことは極めて難しい。職場や会食の場などで感染すれば、同居家族への感染は結果として増えて行かざるをえず、その前段階で防ぐしかない」と、前出の医療関係者は話す。

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 たとえ、妻が娘にうつしたのが事実だったとしても、何ら責められることでもないし、何ら心配することでもない。家庭内感染を防ぐことは「無理ゲー」(※難易度が高すぎてクリアするのが無理なゲームのこと)なのだ。

11年ぶり自殺者増加、「感染」する自殺

 それでも、この女性のように家族を遺して先に死ぬ例は後を絶たない。それは、新型コロナウイルスだけでなく、自殺も「感染」していく現象だからかもしれない。

 2020年の自殺者数は2万919人だった(1月22日、警察庁と厚生労働省が発表)。10年連続で減少していた自殺者数は、リーマンショックのあった直後の2009年以来の増加に転じた。新型コロナの影響で当然、とする見方もあるだろうが、月ごとの推移をみると、そう簡単に決めつけられない状態がみえてくる。4月、5月は平年より減っているからだ。

 4月、5月といえば、初めての緊急事態宣言が出され、ウイルスの特徴や防ぎ方もまだあやふやななか、昨年で最も国内が陰鬱な雰囲気に覆われた月といっていいだろう。そこで、なぜか自殺者は抑制されている。

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 変わって増えているのが7月以降。政府の自殺対策総合会議に提出された報告書は、新型コロナを直接の自殺理由とみていない。自殺を考える土壌を作った要素としては言及しているが、むしろ直接的な増加要因としてあげられたのは「後追い自殺」だった。