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「娘にうつしたかもしれない」コロナ自宅療養の女性は“再会”の翌朝になぜ命を絶ったのか

「娘にうつしたかもしれない」コロナ自宅療養の女性は“再会”の翌朝になぜ命を絶ったのか

2021/02/08

genre : ニュース, 社会

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三浦春馬、竹内結子……ウェルテル効果

 報道を受けての後追い自殺は、精神医学で「ウェルテル効果」とも呼ばれる。ゲーテの初期の小説「若きウェルテルの悩み」が出版された当時、主人公のウェルテルと同様の手法で自殺を図る人々が相次いだことを受けてのものだ。その後、自殺を報じた新聞記事とその後の自殺者数の研究なども進み、センセーショナルに自殺が報じられるほど、自殺者数が伸びるとする研究報告が相次いだ。

 報告書によると、09~20年の自殺者数の変動をみると、明らかに11年5月中旬ごろと20年9月末~10月上旬ごろに突出して自殺者が増えている。

 11年5月中旬は女優の上原美優、20年9月下旬は竹内結子の自殺が明らかになった時期と同じだ。20年7月も、上記の2つの時期ほどではないが、自殺者は増えている。誰が亡くなったか。俳優の三浦春馬だ。

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三浦春馬さん ©文藝春秋

 竹内が自殺した9月27日を境に2週間ごとの男女別・年代別の自殺者数をみると、それまで30人程度だった40歳代の女性の自殺者数は80人あまりに急増。20歳代、30歳代の女性の自殺も30人前後から50人前後に増えており、明らかな変化がみられるのだ。

 男性も40歳代で男性は同時期に70人前後から120人前後に急増しており、女性ほど極端ではないにせよ、「ウェルテル効果」が目に付く。

写真はイメージです ©iStock

 社会学者のデュルケームは自殺を個人的要因によって規定されるものとする考えと決別し、「それぞれの社会は、ある一定数の自殺を引き起こす傾向をそなえている」と唱えた。デュルケームによれば、自殺は「社会集団の統合」が弱いと増える。

 ワクチン、五輪、経済など課題山積の新型コロナ対策。社会集団の統合に資する流れが続くことを祈りたい。

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