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重要裁判を前に、狙いは判事を萎縮させること

 長官弾劾をという声も出ていた4日、結局、イム判事の弾劾訴追が国会で賛成179、反対102で通過した。韓国憲政史上初めてのことだった。

 そもそも、なぜ今ごろ弾劾訴追案が浮上したのか。

「狙いは、判事を萎縮させることにあります。与党、特に文派からは身内の惨憺たる判決に怒りが爆発していた。巨大与党の慢心はここでも毒になっている」(冒頭記者)

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 昨年11月には、文大統領の最側近といわれ、かつては次期大統領候補のひとりとされたキム・ギョンス慶尚南道知事が二審でインターネットの不法書き込みに加担したとして懲役2年の実刑となり、大統領選出馬の望みは消えた。

キム・ギョンス慶尚南道知事 ©時事通信社

 続いて12月にはチョ・グク前法相夫人に一審で懲役4年の判決がでて、さらには、今年1月にも、やはりチョ前法相の息子のインターン証明書を偽造したとして青瓦台前民情室秘書官・「開かれた民主党」現代表が執行猶予付きの懲役8カ月となり、議員職剥奪の危機に陥っている。

「今後は、文政権を揺るがしかねない2018年の蔚山市長選挙への青瓦台介入疑惑関連と月城1号機原子力発電所閉鎖を巡る公文書破棄の疑惑に関する裁判が控えている。裁判所へ先手を打って警告したというのが中道、保守派の大方の見方です」(同前)

知る権利は日本より保たれている

 キム・ミョンス長官の忖度発言で気になるのは、2018年10月30日の徴用工裁判についてだ。これも忖度かと疑いたくもなるが、保守系紙記者は、「87年の民主化以降、裁判所にも変化があって、忖度のようなものはしなくなったと言われています。徴用工でも慰安婦でも個人請求権が消滅しない限り、こうした被害者救済の判決は続くと思います」と政治絡みを否定した。

 キム長官の辞任を求める声が止まない中、今度は前環境相が一審で職権乱用罪などで懲役2年6カ月の判決が出て法廷拘束された。これは、前環境相が傘下機関の人事に不法介入したとされた事件で青瓦台の関与も疑われている。「機会の平等、過程の公正、結果の正義」が口癖の文在寅大統領が抜擢した人物だった。

チョ・グク前法相 ©時事通信社

 4月のソウル・釜山市長補欠選挙を控えて与野党の攻防は烈しくなっており、保守VS進歩メディアのくんずほぐれつの報道合戦からは“不都合な真実”が次々と飛び出している。

 次期大統領選挙の前哨戦といわれる2つの市長選で韓国の有権者はどんな判断をするのだろうか。

 それにしても、こんなマクチャンドラマ(あり得ない展開のドラマ)に社会も世論も騒々しいが、一方では知る権利も保たれているわけで、政権の不正疑惑が燻ったままの日本とは対照的だ。