昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

文政権、チョ・グク事件の“倍返し”か…産経「慰安婦コラム問題」で判事弾劾、なぜ?

2021/02/12

 最高裁判所長官が自ら三権分立を毀損する発言をしていたことが明るみに出て騒然となっている。

「与党は180議席の毒杯を飲み続けていて、それが毒であることも分からないくらい麻痺している」

 中道系紙記者はこう吐き捨てた。与党「共に民主党」は4月の総選挙で過半数以上の163議席を確保し、汎与党で189議席の巨大与党が誕生していたのは周知の通り。

 ことの発端は2月1日。与党議員がある判事の弾劾訴追案を発議したことから始まった。

弾劾事由は妥当だが、なぜ今?

 弾劾の対象となったのは、イム・ソングン現釜山高等裁判所部長判事。弾劾事由は遡ること7年前。産経新聞の当時の加藤達也ソウル支局長が同社ウェブサイトで書いた署名コラム「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」(2014年8月3日)の内容が名誉毀損にあたるとして起訴された事件に関係する。

 加藤支局長は15年12月に無罪となったが、イム判事はその判決文に介入したとして在宅起訴された。「記事の虚偽性と不適切な行動だったことをいれてほしい」という知り合いの判事の言葉を担当裁判官に伝えたという。当時、イム判事は、ソウル中央地方裁判所の部長判事だった。

 これは法官の独立を侵害するものでもちろん許されない行為。そのため、弾劾事由は妥当だとする声が韓国では圧倒的だが、ここで問題となったのは、「なぜ今になって弾劾なのか」(前出記者)だ。

 文在寅政権に入り、「積弊清算」のかけ声の下、朴槿恵前大統領や李明博元大統領をはじめ、前政権の関係者らは次々と裁かれた。法曹界では、2019年2月、ヤン・スンテ前最高裁判所長官が起訴された。嫌疑は朴前大統領の意向を汲んで徴用工裁判を遅らせたとする職権乱用罪。同年5月から裁判が始まり、現在は一審の判決待ちとなっている。

文在寅大統領 ©共同通信社

イム判事も係争中で、昨年2月の一審では無罪判決が出たこともあり、弾劾についてはうやむやになっていた。しかし、4月の総選挙で弾劾を推進する元判事が当選したこと、また持病もあることから、イム判事は選挙直後、辞表を提出。

 しかし、受理はされず、その後2回に渡り、辞任を申し出たが一蹴されたと報じられた。公開されたテープは、昨年5月、キム・ミョンス最高裁判所長官との初面談でのものだった。