1ページ目から読む
2/3ページ目

 陪席人のいない1対1の面談だったため、イム判事は「辞任理由がきちんと伝わったかどうかを後日、確認するために会話を録音した」(東亜日報、2月5日)という。

 イム判事の弾劾訴追案の決議が迫った3日、朝鮮日報がキム長官の政治忖度発言をスクープ。キム長官は「事実無根」と全否定したが、イム判事が録音テープを公開すると局面は一転。最高裁判所長官の三権分立を毀損する発言だと大騒ぎとなった。録音テープの中身からポイントになる部分を再録しよう。

「私としてはいろいろな影響というか、それを考えないといけない。その中には政治的な状況もみないといけないし……。(中略)今、弾劾しようとあんなにわたわたと動いているのに、私が辞表を受理してしまえば国会でどんな話をされるか。(中略)いったん、政治的なこと、そんな状況は別問題だから、今日(辞表を)受理してしまえば弾劾という話も出せなくなってしまう」

ADVERTISEMENT

 ちなみに国会は現職の判事のみを弾劾訴追できる。

キム長官任命は文支持派の意向を汲んだ人事

 テープの内容が明るみに出るとキム長官は態度を一変、「9カ月前の明らかではない記憶に頼って事実と異なった答弁をしたことに恐縮している」(中央日報、2月6日)としどろもどろの弁明に終始し、野党を中心に「長官は辞任せよ」という声が高まっている。

キム・ミョンス最高裁判所長官 ©時事通信社

 別の中道系紙記者が言う。

「与党などの進歩層は一斉に、『盗聴は違反行為』とイム判事を批判しましたが、録音する者が会話に参加した場合は相手の同意なしの録音でも法律違反にはなりません。もちろん、道徳的に適切ではありませんが。

 より重大なのは、最高裁判所長官の政治への忖度が明らかになったことと、今になって弾劾が推進されたことです。キム長官は辞任すべきでしょう」

 キム長官は、ヤン前長官の後任として、2017年9月に文在寅大統領から任命された。進歩系で、法曹界にある進歩系の研究会「ウリ法研究会」とその後身ともいわれる「国際人権法研究会」を立ち上げた人物。

「抜擢された時は、地方にいた、長官としてふさわしくない器の小さい人物とみられており、意外な人事にみな首を傾げた。進歩派、特に文派(文大統領の熱烈な支持層)にとっては使いやすい人物だったのでしょう」(同前)