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《不都合メモをシュレッダー》加古川中2いじめ自殺訴訟 市側の“開き直り”は法廷で通用するか

《不都合メモをシュレッダー》加古川中2いじめ自殺訴訟 市側の“開き直り”は法廷で通用するか

2021/02/15
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 すべてを闇に葬りたかったと思われても仕方がない。いじめを苦にした中学2年生の女子生徒の訴えを何度も見逃した挙げ句、生徒が自殺した後も事実を隠蔽し続け、「法的責任はない」と言い張る学校と教育委員会がまた一つ、問題になっている。

 2016年9月、兵庫県加古川市で市立中学2年だったAさん(当時14歳)がいじめを苦に自殺した。その後に明らかになったのは、Aさんや他の生徒が再三にわたって教師にいじめを訴え、「死にたい」というメッセージを送り続けていたにもかかわらず、学校側が一貫して「ただの生徒間のトラブル」と無視を決め込んでいた事実だった。地元記者が言う。

※写真はイメージ ©iStock.com

「さらに問題になったのが、いじめ発覚後の学校の対応です。Aさんへのいじめは主に所属していた剣道部で深刻でした。Aさんの訴えを受けて、剣道部の顧問は部員たちにメモ用紙を渡していじめについて書かせましたが、あろうことかそのメモを副顧問がシュレッダーで廃棄したのです。いじめの事実を校長にも報告していませんでした」

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廃棄のメモ「紛失した」とごまかし

 Aさんがいじめを受け始めたのは、中学1年の頃からだ。部活やクラス内で無視や仲間はずれにされ、無力感に苛まれるようになった。「うざい」などの暴言を日常的に受け、「死ね」と書かれたメモを渡されることもあった。

 一方で、Aさんは何度もSOSを発した。1年生の秋には両親経由で部活の顧問に相談し、冬以降には担任への連絡ノートに「しんどい」と書き続けた。2年生になってからも、全校生徒向けのアンケートで「友だちにバカにされることがある」「無視されることがある」などのいじめ関連の全5項目で「あてはまる」と答え、周囲にも「死にたい」とこぼしていた。だが、学校側は何の反応もしなかった。

2017年 自殺はいじめが原因と認定し、謝罪する加古川市教育委員会の田渕博之教育長ら ©共同通信

 前述のメモ廃棄は、1年生だった15年11月に両親の訴えを受けて剣道部の顧問が行った調査で起きた。加古川市関係者が明かす。

「メモには、複数の部員らが見聞きした悪口や舌打ちの場面など、いじめの内容が書かれていたようです。ただ、事を大きくしたくない顧問や副顧問は『お互いさまやろ』の一言で片付け、メモを捨て去りました。そして、その後に市が設置したいじめの第三者委員会に副顧問は『メモは紛失した』と答えています。ウソにウソを塗り重ねたわけです」