「調査に協力する生徒への圧力と受け取られても仕方ない」
学校側の隠蔽体質は一貫していた。Aさんの自殺後、学校側はAさんらがいじめの事実を書いたアンケートの存在を遺族である両親に伝えず、自殺の事実そのものも公表しなかった。両親は16年10月に真相究明を訴えて加古川市に第三者委員会の設置を求めたが、アンケートの存在は、その外部調査の過程で知らされたという。
さらに今年1月、メモのシュレッダー廃棄が明るみになった後も学校側は「廃棄したかは答えられない」と事実を伏せた。
「実は自殺があった2年後、遺族にメモの所在を聞かれた副顧問が『僕がシュレッダーにかけた』と説明していたんです。それでも学校は廃棄を認めませんでした。遺族はこのやり取りを録音しており、その音声データが報道されて初めてしぶしぶ認めました」(学校関係者)
第三者委員会の調査による生徒への聴き取りで廃棄されたメモの内容は大半が復元できたものの、その中でも学校側の調査妨害とも取れる行為があったという。
「第三者委はAさんへのいじめを知る他の生徒らにも話を聞いていましたが、学校側は調査を受けた生徒を呼び出し、何をしゃべったかを聞き回っていたのです。調査に協力する生徒への圧力と受け取られても仕方ありません」(同前)
こうした経緯について、文春オンライン編集部を通じて加古川市教育委員会に質問状を送ったところ、教育委員会は隠蔽と圧力を否定した。
「メモは副顧問が廃棄したが、話し合いでAさんと他の部員との関係は改善していました。いじめを隠蔽しようとしたものとは認められません。
第三者委員会の調査について生徒に聞き回ったという事実自体、市教委として確認できておりません。学校関係者からの聞き取りも行いましたが、かかる事実の存在を否定しております。市としては第三者委員会の調査に協力する姿勢を示してきたものであり、圧力という表現は極めて心外であります」
だが、「極めて心外」な対応を受け、怒りが冷めないのは遺族だろう。娘のいじめに関する調査と再発防止を求め続けてきたAさんの両親はその後、加古川市教委と全面的に対立せざるを得なくなっている。理由は「市教委への不信」だ。
「娘は学校に殺されたも同然」
第三者委員会は17年12月に出した報告書で、Aさんの死がいじめによる自殺だったと認め、「Aさんがアンケートでいじめを訴えたときに学校がきちんと対応していれば、Aさんは自殺せずに済んだと考えるのが合理的」と学校の落ち度を指摘。Aさんの父親もこのとき、「教師たちはいじめを疑うことすらせず、娘の『絶望の中にいる』というシグナルを無視した。娘は学校に殺されたも同然だ」という手記を公表している。