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“場合分け想定”と“説明”とは?

〈明治の陸軍において活躍した川上操六についてご教示を乞うと、半藤さんは、こう教えて下さいました〉

《川上が偉かったと思うのは、情報というものを重視した点だと思います。清国と戦争になる以前から優秀な将校たちをつぎつぎ清国に送り込んで、地形をはじめ軍の内部事情などを調べさせています。敵情をしっかりふまえた上での開戦でした。しかも川上は清国に負けたときのことを想定しているのです。勝ったときのことしか考えない昭和の陸海軍とは大違いでした》(『勝ち上がりの条件』)

〈危機に際して“場合分け”によって混乱した状況を少しでも整理し、都合の悪い情報にも耳を傾け“最悪のケースも想定”し、これに備えるのが、良きリーダーです〉

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磯田道史さん

〈コロナ対応に必要なのも、まさに“場合分け”と“説明”です。

 政府や政治家は「仮定のことには答えられない」という表現を使います。しかし、これは、自らを守っているように見えて、かえって自らを危険にさらす場合も多いのです。

 例えば、仮に「GoTo政策」を行うにしても、「感染拡大を防げなかった場合には」などときちんと“場合分け”をし、そうした場合は中止するとか、緊急事態宣言を出すとか、事前に“説明”をしていれば、「後手に回った」とは言われにくく、支持率もこれほど下がらなかったのかもしれません〉

〈先の見えない不安のなかで、「仮定の話(=場合分けと説明)」をきちんとして、その不安を最小限にするところにこそ、リーダーや国家の存在理由はあります〉

〈国家が“都合の良い自己欺瞞”や“危うい前提”で突き進んでしまうのが、まさに、半藤さんが生涯をかけて避けるべきだ、と訴え続けてきた“いつかきた道”です〉

出典:「文藝春秋」3月号

 その他、「ハチ公を見に行った半藤少年がすでに4歳にして見せた『歴史探偵』としての才覚」「悠仁さまへの『空襲体験』の御進講」「上皇上皇后のもとに半藤さんと共に伺った時のエピソード」など、磯田さんによる半藤さんへの追悼「悠仁さまに伝えた『空襲体験』」の全文は、「文藝春秋」3月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

文藝春秋

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悠仁さまに伝えた「空襲体験」