コロナ禍が終息を見せず、緊急事態宣言がだらだらと続く中、東京五輪選手村での利用の後に分譲・引渡しを予定している大規模マンション群、晴海フラッグが久しぶりにメディアを賑わせている。このマンションですでに購入の契約をしている客の一部、約20名が、東京五輪延期により、引渡しが1年程度遅れたことに対する補償を求めて、東京地裁に民事調停を申し立てたからだ。
2023年3月の引渡し予定、1年延期を申し出
晴海フラッグは計画戸数5632戸、東京都中央区の晴海に建設される大規模マンション群だ。このうち分譲されるのは全体戸数の74%にあたる4145戸で、19年7月に始まった中低層棟の分譲ではすでに約900戸あまりが売買契約を締結しているという。五輪終了後に建設が予定されている高層棟(2棟1455戸)を除いては、建物はすでに完成、五輪終了後に間取りなどを含めて全面リニューアルを施して引き渡すため、中低層棟の引き渡しは2023年3月を予定していた。
ところが長引くコロナ禍とそのことを理由とする五輪延期によって、売主である三井不動産レジデンシャルを幹事会社とするデベロッパー11社は、契約者に対して引渡しの1年延期を申し出たのだ。
入居を予定していた契約者の方々には確かに気の毒な部分がある。投資用で購入する投資家と違い、実需での利用を考える場合、現在居住中の賃貸マンションの契約延長の問題、子供の学校の問題など、たかが1年されど1年である。1年分の賃料くらい補償してほしい、という気持ちもわからなくもない。説明会の開催を迫ったが、売主側はこれを拒否。そのことで関係が険悪になったとの報道もある。
売主側は「契約解除して別のマンションを探せば……」
いっぽうで、売主側も今回のコロナ禍による五輪開催延期は想定外の事象であるので、本来ならば契約締結後の買主からの契約解除は、既に受領している手付金(購入価額の10%程度)については、返済せずに没収してしまう(手付流し)こともできるのだが、今回はノーペナルティでの解約に応じているという。
ならば延期によって人生計画が狂ってしまう契約者はさっさと契約解除して別のマンションを探せばよい、これが売主側の理屈だ。しかも通常のマンション売買契約書には、天災などの不可抗力な事象を原因とする引渡しの遅延については免責される条項が入っているはずだ。さすがに延期を売主側の人為的なミスとすることに関しては、今度はデベロッパー側に同情してしまう。