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オリンピックレガシーのなくなった選手村「晴海フラッグ」は、値下げしてどんどん売りさばくしかない

2021/02/23
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五輪に振り回されている晴海フラッグ

 つまり結論としては、契約者の気持ちは理解するものの、補償などの要求はやや「無理筋」というのが結論だ。担当する弁護士もいきなり裁判に訴えることはせずに調停に持ち込んでいるところをみても、裁判所で闘うことにあまり勝ち目はないと思っているのではないだろうか。裁判所からしても、こうした案件がきても「まあ、お客さんの気持ちもわからないではないが、売主は大手さんばかりなのだからあんまり喧嘩せず」くらいの気持ちだろう。もともと東京都から都有地が異常に安いお値段でデベロッパー各社に卸されている(むしろこちらのほうが、先に裁判沙汰になっている)わけだから、ちょっと補償くらいしてくれたって、という買主側の思惑も透けて見える。

 現在、国民の大半が東京五輪の中止または再延期を望んでいるという。五輪に振り回されている晴海フラッグだが、一向に先が見えない視界不良の中、どうしていけばよいのだろうか。結論は「もう振り回されることはやめてしまおう」というものだ。

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オリンピックレガシーとしての価値がなくなれば、冴えない物件に

 まず、五輪が中止となれば話は簡単だ。今すぐリニューアル工事にかかることしかない。従来、2年半をかけて間取りの変更、内装等のやり替えを行うことを予定してきたが、選手村として使われないのだから片付けもなく、多少工期を早めることができるかもしれない。最速でかかれば23年の夏くらいまでに引き渡せる可能性がある。ただしオリンピックレガシーとしての価値はなくなり、勝どきの駅からめちゃくちゃ遠い海辺のマンションという、あまり冴えない物件となってしまいそうだ。なにせ勝どき駅周辺には徒歩圏内に既にたくさんのタワマン群がそびえる。その中をとぼとぼ歩いて海風吹きすさぶマンションに帰る気持ちはあまり盛り上がりそうにない。まだ残り3000戸以上の住戸を売らなければならないデベロッパー側も、まことにご苦労様というしかない。

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 問題は再延期だ。また1年後に開催となれば、引き渡しは当初予定の23年3月から25年3月に遠のくことになる。購入を決断したのは19年。婚約から6年というあまりに遠い結婚式を待つ男女のような気分だ。6年もたてば家族構成も変わる。今はかわいい息子がグレたり、娘は口も利かなくなっているかもしれない。学校だって変わっているかもしれない。6年たてば小学校だって卒業だ。