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築18年、オフィスに不向きなブーメラン形…“一昔前”の香り漂う「電通ビル」の本当の価値とは

2021/02/09

「電通本社ビルが売却――」

 新型コロナウイルスの猛威に晒され、再びの緊急事態宣言に揺れる東京で、衝撃的なニュースが年明けに飛び込んできた。電通といえば、東京五輪で中心となってタクトを振る広告会社。SNSでは「すわっ、東京五輪はやっぱり中止で、電通はカネに困って売却か」といったうがった見方まで出回った。その売却先は、現時点ではみずほ系不動産会社ヒューリックが有力という。

オフィスとしての有効率が極めて悪い電通本社ビル ©️iStock.com

コロナ蔓延の昨年から相次ぐ本社ビル売却

 五輪という連想に加え、東京汐留のオフィス街に聳え立ち、飲食店街から劇場までを展開する巨大ビルであることから、電通の本社ビル売却は、世間の耳目を集めている。しかし、実はコロナ禍が蔓延する昨年から、都内では、企業の本社ビルの売却が相次いでいる。

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 昨年10月、虎ノ門にある高さ169m、35階建て、延床面積約2万坪のJT本社ビルが売却された。価格は800億円といわれている。買主は、今やオフィスビル運営面積では日本一と自社広告で謳っている住友不動産だ。売主はJT(日本たばこ産業)だ。既に本社を隣町神谷町にある神谷町トラストタワーに移転済み。JTは、用意周到に計画し売却することに成功、11月には住友不動産に建物を引き渡している。

 通常、本社ビルを売却する多くのケースが、ビルの所有権を売却したのちもテナントとして借り続けるのだが(これをセールス&リースバックという)、高い金額で売却しようとすると見返りに高い家賃を長期で約束させられてしまいがちだ。コロナ禍によってオフィス賃貸マーケットが厳しくなることが予想される中で、JTは他のビルに移転することでそうしたリスクを極小化したといえる。いっぽう住友不動産はこの巨大ビルをテナントで埋め戻さなければならない。しかし800億円という買値は、このビルの詳細なデータがないので一概には言えないが、投資利回りで4%台は確保できそうなので、お互いにウィンウィンの取引だったといえる。