1977年5月に公開され、史上最も興行的成功を収めた映画シリーズのひとつである「スター・ウォーズ」シリーズ。2019年に「スカイウォーカーの夜明け」が公開され全9部作が完結した言わずと知れた名作映画だ。

 この「スター・ウォーズ」シリーズが生まれた当時の様子、そして作品がその後に与えた影響について、『スター・ウォーズ論』(河原一久・NHK出版新書)より抜粋して引用する。

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すべては1977年に始まった

「遠い昔、はるか彼方の銀河系で……」

 というタイトルカードと共に幕を開けた第一作「スター・ウォーズ」は、監督・脚本を務めたジョージ・ルーカスが創り上げた映画オリジナルの物語だ。帝国の圧政に立ち向かう姫が悪の手先に囚(とら)われ、伝説の英雄を父に持つ農家の青年が、数々の冒険の果てに敵の究極兵器を破壊することに成功し、自らもまた英雄となる話である。

第一作「スター・ウォーズ」公開時の様子(1977年12月27日撮影) ©AFLO

 誰もが共感できる青年ルーク・スカイウォーカーを演じたのは、マーク・ハミル。ミュージカルスターのデビー・レイノルズと歌手エディ・フィッシャーという両親を持つキャリー・フィッシャーが、勝ち気で現代的なレイア姫を演じている。そして、皮肉屋のならず者で、まるで西部劇からそのまま抜け出してきたような出で立ちのハン・ソロを演じたのがハリソン・フォード。

 彼ら無名俳優たちの脇を支えたのが名優たちだ。「アラビアのロレンス」(1962年)や「ドクトル・ジバゴ」(1965年)などでの名演で知られ、「戦場にかける橋」(1957年)でアカデミー主演男優賞を受賞している“千の顔を持つ男”アレック・ギネスが、賢者オビ=ワン・ケノービを演じている。また、黄金時代のハマープロ製作のホラー映画でヴァン・ヘルシング教授やフランケンシュタイン博士を演じていた伝説的俳優ピーター・カッシングが、モフ・ターキン総督として登場する。

 さらに、黒ずくめの怪しい悪役ダース・ベイダーは、悪役なのにすでに絶大な人気を博していたし、R2-D2とC- 3POという凸凹ロボットコンビも、子供たちを中心に大人気だった。巨大な宇宙船、飛び交うレーザー光線、エキゾチックな惑星、そして伝説のジェダイ騎士が使用した光線剣(ライトセーバー)……。日常で溜まったストレスを発散させ、非日常の世界に誘ってくれる、この古き良き単純明快な勧善懲悪物語に世界中が熱狂した。1年遅れで公開された日本でも、1年近く続く超ロングランとなる特大ヒットとなった。