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すべては1977年に始まった…“抱き合わせ企画”だった「スター・ウォーズ」が映画界に起こした革命

2021/02/26

「大失敗作」予想…抱き合わせでの配給

 しかし公開前までは、この映画は「大失敗作」になると業界内ではささやかれていた。そのため、劇場側もこの映画を上映したがらず、ベストセラー小説の映画化「真夜中の向う側」と抱き合わせで配給された。つまり、「真夜中の向う側」を上映したかったら、「スター・ウォーズ」も上映しなければ駄目だ、という条件を付けていたのだ。

 そのため、5月25日の公開日に全米で「スター・ウォーズ」を上映した劇場は、わずか32しかなかった。今やファンの聖地ともなっているハリウッドのチャイニーズ・シアターもごく短期間だけの上映にとどまり、断腸の思いで誰も観たいとは思っていないことが分かりきっている「恐怖の報酬」のリメイクを上映しなければならない羽目になった。

「渡航目的は?」「スター・ウォーズです」

 それだけに、契約の上映期間が終わると、同劇場は嬉々として「スター・ウォーズ」の上映を「凱旋」と銘打って大々的に再開。その初日には、ダース・ベイダー、R2-D2、C-3POを招いて、あの有名な手形(足形)を残すセレモニーを行って、遅れを取り戻そうとした。

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ハン・ソロを演じたハリソン・フォード ©getty

 とにかく、当時、世の中は大騒ぎだったそうだ。ロスの空港の通関手続きでも、

「渡航目的は?」

「スター・ウォーズです(笑)」

「おお! 楽しんでね!」

 といった具合。

 誰もがスター・ウォーズのTシャツを着ていた。オーケストラ主体のサントラアルバムは品切れになり、代わりにシンセサイザーのカバーアルバムが飛ぶように売れ、ディスコでは若者が踊りまくった。予想外のヒットに、おもちゃも商品を店頭に並べることができず、「来春にはお届け」という予約カードが販売され、これがまた売れに売れた。

 ベトナム戦争やウォーターゲート事件など、アメリカ社会に影を落とす出来事が相次いだ「絶望の時代」の後に、スター・ウォーズは突然現れた「新たなる希望」でもあったのだ。