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【本日接種スタート】「ワクチン不信は社会が救われない」 東京都新型コロナ対策アドバイザーの医師が語る感染症対策の“不備”

『週刊文春 新型コロナ完璧サバイバルガイド』より#2

2021/02/17

source : 週刊文春出版部 週刊文春 新型コロナ完璧サバイバルガイド

genre : ライフ, 医療, 社会, 政治

 連日1000人越えの感染者数を出し、危機に瀕していた東京。この1年、東京都新型コロナ対策アドバイザーとして、最前線で奔走してきた大曲貴夫医師が取材に応じた。「何が失敗だったのか」「小池都知事に対する評価」「感染収束の見通し」など、数々の問題を徹底的に語った緊急インタビューを、『週刊文春 新型コロナ完璧サバイバルガイド』より、一部抜粋して紹介する。(全2回中の2回目。前編を読む)

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 その後、結局は標準治療を見出さない限り、全然前には進めないということが分かって、準備に1カ月かけて、米国との共同治験に踏み切ったのです。今、コロナに対して世界ではいくつかの治療薬が承認されていますが、すべてそういう手続き、具体的にはランダム化比較試験を経たものです。何となく使ってみて効果があった、なんていうほど薬は甘いものではない。時間がかかっても絶対に手続きが必要です。

極めてロジカルに対応できる現在

 もう一つは「病態」、つまり病気が発生する仕組みが分かってきたので、これを基に治療戦略が立てられるようになりました。新型コロナは、あるタイミングで突然、容体が悪くなって重症化します。そのタイミングがわからずに治療が後手後手になってしまうケースがありました。ところが、血液中のサイトカインや尿に含まれるある物質を、重症化のマーカーにすることができるようになってきたのです。

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 その数値によって、この患者さんはこれから容体が悪くなるな、というのが見えつつある。糖尿病、高血圧、心臓病、肺の病気など基礎疾患を考慮し、先回りしてこの投薬を始めよう、こういう治療をしよう、と極めてロジカルに対応できるようになってきました。

 昨年末頃から救急車を呼んでも、ベッドがなくて、なかなか入院先が決まらないケースが相次いで報告されている。中には容体が急変しても入院できず自宅で亡くなるケースもある。感染拡大にともなう医療体制の逼迫については、連日議論になっているが、その点についてはどう考えているのか。

日本の医療は余裕を持てないようにできている

「この一年、なぜ、全部の患者さんを受け入れられるように、医療側は準備してこなかったのか」との批判がありますね。ですが、一方で過去これまで医療に少しでも無駄があれば、国の財政を圧迫していると怒りの声があがっていたのも事実です。本来、日本の医療は余裕を持てないようにできています。理由は社会がそれを求めてきたから。これは強く言いたいです。

 もちろん単純にベッドを増やすことはできると思います。ただ、医療は人がやるものです。特に新型コロナの治療は大きなマンパワーが必要で、コロナの患者さんにベッドを空けたとなると、他の病棟から一般医療をやっている医師や看護師を連れてこないと回りません。その分、今度は一般医療が圧迫されることになります。医療はいわば莫大なお金のかかるインフラなので、簡単に伸び縮みできません。 

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 コロナの来るずっとずっと前から感染症対策に携わって感染対策への備えを訴えてきた我々としては、新型コロナに対応するだけのキャパシティ、人手の確保、そのための人材教育をさせてもらえなかったと思っていて、そこには忸怩たるものがあります。そうさせてくれなかったのは社会です。