連日1000人越えの感染者数を出し、危機に瀕していた東京。この1年、東京都新型コロナ対策アドバイザーとして、最前線で奔走してきた大曲貴夫医師が取材に応じた。「何が失敗だったのか」「小池都知事に対する評価」「感染収束の見通し」など、数々の問題を徹底的に語った緊急インタビューを、『週刊文春 新型コロナ完璧サバイバルガイド』より、一部抜粋して紹介する。(全2回中の1回目。後編を読む)
2019年12月、中国・武漢で発見された新型コロナウイルス。あれから一年以上が経過したが、世界はいまだ感染収束の兆しが見えず混乱状態にある。
今年1月16日、東京都の最前線でコロナ患者の治療にあたってきた国立国際医療研究センター病院・国際感染症センター長の大曲貴夫医師にインタビューを行った。小池百合子都知事をはじめとする東京都の行政とも連携し、対応にあたってきた激動の一年を振り返ってもらった。
抑え込もうとすると、いろいろな問題が噴出
私自身、当初は2009年の新型インフルエンザと同じくらいに蔓延する可能性を予想していました。ただ、昨年3月の時点では「ある程度の感染拡大は抑え込める」「何とか行けるのでは」という感触もありました。実際、今のところ台湾やニュージーランドなどでは抑え込めています。
ところが、そう甘くはなかった。実際に抑え込もうとすると、いろいろな問題が噴出し、これまで作り上げてきた制度や仕組みが、うまく働かないということがたくさんありました。非常に悔しい想いです。
私はこれまでずっと感染症対策をしてきて、パンデミックが発生した際の対応について、個人的にも思考訓練をしてきました。
具体的なイメージとしては2015年のMERSのアウトブレイクです。当時、韓国では186人の患者が出て、都市機能が麻痺してしまった。東京でも同じことが起きる可能性がありました。予定通り東京オリンピックが開催され、海外からMERSの感染者が来日すれば、一気に数百人単位の患者さんが出てしまう。それを抑え込まなければいけない。それには、どういった対策が必要なのか、いろんな人にも相談してきましたが、正直言うと、みんなあまり本気で取り合ってくれませんでした。私が何か変なことを言っている、と(笑)。