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「ここまで大ヒットするとは思っていなかった」 “短尺はヒットしづらい”セオリーを覆した『PUI PUI モルカー』の“毒と癒し”

2021/02/23
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 今、SNSを中心に一大ブームを巻き起こしている短編アニメ『PUI PUI モルカー』(以降、モルカー)をご存知だろうか。

 1月5日(火)、テレビ東京系の子供向けバラエティ番組『きんだーてれび』内で第1話が放送されるや、Twitterなどでじわじわと人気に火が付き始めた『モルカー』。1月12日の第2話放送後には、「モルカー」という単語がTwitter上で50万件以上呟かれ、瞬く間にファンアートがいくつも生み出されたほどだった。

 本作の大きな特徴は、劇中に登場するモルモットを模した“モルカー”と呼ばれる羊毛フェルト製のキャラクターたちの動きを、ストップモーションという技法で表現していることだろう。描いた絵をつなげて表現する一般的なセルアニメーションとは違い、実物の人形を1コマ1コマ地道に写真撮影して作り上げる技法で、制作に莫大な時間と手間がかかるのだ。

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 また本作は、モルモットが車として活躍する独創的な世界観であり、そこにかすかに織り込まれた毒や社会風刺が、子どものみならず大人の琴線にも触れたのである。

羊毛フェルト製のモルカーたち(シンエイ動画提供)©見里朝希JGH・シンエイ動画/モルカーズ

 そこで今回は『モルカー』のエグゼクティブプロデューサー・杉山登氏にインタビュー。『モルカー』を手がけるようになった経緯や制作秘話まで詳しく話を伺った。(全2回の1回目。後編を読む)

 ≪杉山登氏プロフィール≫

 制作会社に所属しながらドラマの助監督を務め、1992年の鈴木保奈美主演ドラマ『愛という名のもとに』にて監督デビュー。1995年テレビ朝日に入社。監督・プロデューサーとして「ガラスの仮面」や映画「ロッカーズ」などを手がけた後、アニメのプロデューサーにシフト。2006年から何作もの劇場版『ドラえもん』や劇場版『クレヨンしんちゃん』をプロデュース。2018年シンエイ動画に出向。現在、企画営業担当の執行役員を務める。

放送直後からTwitterでバズりまくった『PUI PUI モルカー』

――まずは『モルカー』の爆発的な人気について、率直な感想をお聞かせください。

杉山 『モルカー』は1話が2分40秒というかなり短尺の作品で、業界的に「短尺はヒットしづらい」というのがセオリーなので、正直ここまで大ヒットするとは僕やほかのプロデューサー陣も思っていなかったですね。特に第1話を放送してじわじわ広がり、第2話でもうTwitterでバズるなんて、本当に誰も想像していなかったんですよ。コロナ禍での外出自粛もあり、家の中で過ごすしかないイライラもたまっていた時期に、この作品の癒しが視聴者のみなさんの心にしみたのかもしれませんね。